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双頭の悪魔/有栖川有栖
評価:
有栖川 有栖
東京創元社
¥ 1,092
(1999-04)
他人を寄せつけず奥深い山で芸術家たちが創作に没頭する木更村に迷い込んだまま、マリアが戻ってこない。
救援に向かった英都大学推理研の一行は、大雨のなか木更村への潜入を図る。
江神二郎は接触に成功するが、ほどなく橋が濁流に呑まれて交通が途絶。
川の両側に分断された木更村の江神・マリアと夏森村のアリスたち、双方が殺人事件に巻き込まれ、各々の真相究明が始まる……。


学生アリスシリーズ第3弾。

夏に起きた嘉敷島での事件の傷が癒えなかったマリアは大学を休学し、東京の両親の元からも去り一人旅に出たが、高知の山奥の村で芸術家たちが自給自足をして他者に立ち入らせないという村に留まったまま帰ってこなくなる。
排他的なその村に危機感を覚えたマリアの両親は、英都大学推理小説研究会に面々にマリアを説得してくれないかと頼み、アリスに江神、望月、織田の4人はマリアの滞在する村・木更村に隣する夏森村に宿をとる。
どうしても正式には入村できず、アリスらは不法に入り込もうとし、結果江神のみが接触に成功するが、そこに発生した鉄砲水で木更村は陸の孤島になり、夏森村でも土砂崩れによって交通が困難に。
そして双方で殺人事件が発生し……というストーリー。

再読です。
長いお話なだけあって読み応えがあります。
「読者への挑戦状」が3回もあるのには苦笑させられましたが、著者が目指す本格ミステリとしての様はよく描かれていると思いますし、交通が遮断された2箇所で別々の殺人が発生する状況にはわくわくさせられました。
問題は、第1の殺人が起きるまでが長過ぎること。
上記の私が書いたストーリーに至るまでに200ページも消費されており、さすがに退屈でした。
2ヶ所に別れてそれぞれ犯人探しを読者が楽しめるだけの登場人物数があり、それをフェアに紹介する必要があるにしてもちょっと長い。
分断された2ヶ所で殺人が起こることは作品紹介で知った上で読んでいる人が多いわけで、ええい早く進めよ物語!と思うせっかちな人間にはマイナスでしょう。
また、動機やトリックが長かったわりにあっけなくて拍子抜け。
素人探偵と化した登場人物たちが色々と推理するのはセオリーですが、2ヶ所でそれをされ、結果これでは……。
トリック自体は好きなんですけどね。
登場人物たちが「殺人事件」という異常事態に対して冷静過ぎるのはいつものこと。
本格だから人間が描けてなくて良いとは言いませんが、そのあたりはやはり重要視しません。
だからマリアの独白が不愉快でした。
私がマリアのことが気に入らないということもあるのでしょうが、江神と一緒にいる以上狂言回しの役割だというのに、ぐだぐだ悩まれても困ります。
これは好みの問題でしょうが。

あまり評価しないのね、と問われると「好みが少しずれていた」と答えることになるかと思う第3作目ですが、シリーズ作品としては、謎の人物である江神のことが僅かですが描かれていることで次作を期待させる内容でもあると思います。
| [国内作家:あ行]有栖川有栖 | 17:32 | comments(0) | - |
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