スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
沖で待つ/絲山秋子
評価:
絲山 秋子
文藝春秋
¥ 480
(2009-02)

仕事のことだったら、そいつのために何だってしてやる。
そう思っていた同期の太っちゃんが死んだ。
約束を果たすため、私は太っちゃんの部屋にしのびこむ。
仕事を通して結ばれた男女の信頼と友情を描く芥川賞受賞作「沖で待つ」に、「勤労感謝の日」、単行本未収録の短篇「みなみのしまのぶんたろう」を併録する。
すべての働くひとに。


短編集で
「勤労感謝の日」「沖で待つ」「みなみのしまのぶんたろう」
の計3作を収録。

第134回芥川賞受賞作です。
いつも芥川賞作品を読んで思うのが、あっさりしているな、というもの。
加えて、悪くはないんだけど、でしょうか。
相性が悪いと言えばそれまでなのでしょうが、大体その作家さんの毒が薄くなっている作品で受賞する気がします。
この表題作もそうでした。
ただ、会社組織に加入したことのない私でも「同期」という存在の特別さが染みました。
「これが、死なんだ。」という言葉も。
でも、どちらかというと、表題作より「勤労感謝の日」の方がシンプルで好きです。
こちらも会社での関係者が出てきますが、さばさばしていて良いですし、主人公の程々にぐったりした感じがたまりません。
「みなみのしまのぶんたろう」は読むのに苦労しました……。
ひらがなって破壊力ありますね。

また、著者の後輩・夏川氏の解説はなかなかに面白かったです。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:あ行]絲山秋子 | 22:53 | comments(0) | - |
ニート/絲山秋子
評価:
絲山 秋子
角川グループパブリッシング
¥ 460
(2008-06-25)
もちろん人に対してどうでもいいなんて言うのは失礼なことだけど、どうでもいいって言ったら、この世の中本当に何もかもどうでもいいわけで、それがキミの思想そのものでもあった。(「ニート」より)
現代人の孤独と寂寥、人間関係の揺らぎを描き出す傑作短編集。


短編集で
「ニート」「ベル・エポック」「2+1」「へたれ」「愛なんかいらねー」
の計5編を収録。

表題作とその続編である「2+1」は好きでした。
曖昧な男女関係というのは著者の作品の中ではよく出てくるものですが、流行語に近かったような「ニート」という言葉を持ってきておいて中身は普遍的なのが面白いです。
著者はこういう駄目男を描くのが上手いですね。
きっと、そういう人を好きだな、可愛いななんて思う心の余地があるのでしょうね。
(私は大嫌いですが。同属嫌悪です)

というふうに読んでいて、最後の「愛なんかいらねー」で衝撃。
私はこの作品が扱っている特殊性愛が本当に苦手で、どれだけ物語の添え物であると解説されても全拒否です。
凄く気分が悪い。
残念ながら、作品の評価云々以前の問題で駄目でした。
短編集というのは、こういう「あれは良かったけどこれが全然駄目」みたいなことがあるから仕方がありませんね。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:あ行]絲山秋子 | 16:50 | comments(0) | - |
スモールトーク/絲山秋子
昔の男はオレンジ色のTVRタスカンに乗って現れた。
会いたくなんかなかった。
ただどうしてもその車が見たかった。
以来、男は次から次へと新しい車に乗ってやってくるようになった。
ジャガー、クライスラー、サーブ、アストンマーティン、アルファロメオ……。
長い不在を経て突然に始まった奇妙で不確かな関係の行き着く先は。
勤め人時代を描いたエッセイ及び掌編小説「ダイナモ」併録。


ゆうこが主人公の連作短編集は
「TVR Tuscan」「Jaguar XJ8」「Chlysler Crossfire」「SAAB 9-3 Cabriolet」「Aston Martin Vanquish」「Alfa Romeo Alfa GT」
の計6編に加えて
「ダイナモ」
で“スモールトーク”。
さらにエッセイで
「カローラバン・スーパースペシャル」「カローラバンその2」「マーク兇鯆匹いけろ!」「ごめんねビート」「見てくれだけのダメグルマ」「馬には乗ってみよ」
の計6編を収録。

読んでいて疲れてしまいました。
車には人並みには興味があるつもりでしたが、外車の名前は出されてもすぐに思い浮かばないのですよね。
扉に写真は載っているのですがジャガーやアストンマーチャンもイメージがあるだけなので、「えーっと具体的にはどんなんだっけ?」と頭を変な方向に使うことが多くて物語に入り込めず。
この作品は車好きが読むと余計に面白いはずですが、それ以外の方は私のようにあれこれ考えずに主人公の気持ちだけを追うことをおすすめします。
主人公は「イッツ・オンリー・トーク」(参考)と同じ方でしょう。
相変わらず嫌な女ですが、変に可愛いところがあって困ります。
スクリッティ・ポリッティ(タイトルの由来でもあります)なんて聞いているところが駄目っぽくてまた可愛い。

エッセイはあちこちにわかるわかる!という記述がありましたが、ひとつひとつは短くてあまり印象に残らない感じです。
併録する必要があったのか、まあすべて車の話ですから一緒にするにはちょうど良いのでしょうが……。
小説とエッセイがこんな風に一緒になっている本は個人的に珍しかったので、ちょっと苦手です。

しかし、主人公が乗っているアルファロメオは唯一すぐに思い出せる車ですが、全然良いと思わない……。
駄目なんですよ、あの顔。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:あ行]絲山秋子 | 13:21 | comments(0) | - |
袋小路の男/絲山秋子
指一本触れないまま「あなた」を想い続けた。
高校の先輩、小田切孝に出会ったその時から、大谷日向子の思いは募っていった。
大学に進学して、社会人になっても、指さえ触れることもなく、ただ思い続けた12年。
それでも日向子の気持ちが、離れることはなかった。
川端康成文学賞を受賞した表題作の他、「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」を収録。


短編集で
「袋小路の男」「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」
の全3編を収録。

12年間報われない片思いを続ける表題作と、その続編とも言える視点が切り替わった(一人称が三人称になり思われる男の言い分も描写される)「小田切孝の言い分」で、もう1作は叔父と姪の交流を描いた作品となっています。
どれも良かったです。
表題作はさすが、というような作品。
付かず離れずの腐れ縁の男女、という恋愛小説ではよくある関係を非常に清潔感のある展開でまとめています。
「小田切孝の言い分」もそう。
個人的には不健康だと思うし、自分が日向子の立場なら襲いかねないかすぐに飽きてしまう気もするのですが、そんな私でもちょっと憧れてしまう不思議な感覚。
また、それより好きなのが「アーリオ オーリオ」
地方公務員でゴミ処理場に勤める40過ぎの未婚男が中学生の姪とプラネタリウムに行ったことからはじまる文通が凄くいい。
姪は「メアドを教えて」と聞くものの、主人公は苦手だから手紙ならいいよ、と言うわけです。
書いて届いて読まれて返事が届くまでの、携帯とE−mailに慣れた現代っ子からするとありえないぐらいのタイムラグが物語を普通じゃないものにしていました。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:あ行]絲山秋子 | 17:41 | comments(0) | - |
逃亡くそたわけ/絲山秋子
「どうしようどうしよう夏が終わってしまう」
軽い気持ちの自殺未遂がばれ、入院させられた「あたし」は、退屈な精神病院からの脱走を決意。
名古屋出身の「なごやん」を誘い出し、彼のぼろぼろの車での逃亡が始まった。
道中、幻聴に悩まされ、なごやんと衝突しながらも、車は福岡から、阿蘇、さらに南へ疾走する。


精神病院に入院させられていた“花ちゃん”は、たまたま中庭で野良猫をかまっていた“なごやん”を誘って脱走する。
夏をプリズンで過ごすのだけは真っ平だったのだ。
そして“なごやん”の車で、二人は南へとひた走る……というストーリー。

特にこれといったストーリーがあるわけではなく、男女二人が南へ南へと車を走らせるだけの小説です。
しかし面白いのは、全編九州弁で描かれていることと、それに対比させるように名古屋出身ながら東京に過大な憧れを持ち東京弁をしつこく使い続ける“なごやん”の存在でしょう。
さらっと、そういう作為的なことを読ませて面白がらせてくれるのですから、うまいです。
そして二人が鬱と躁だということ。
この主人公である“花ちゃん”と無理矢理旅に同行させられることとなった“なごやん”の組み合わせが非常に良かったです。
爽やかでした。
また、幻聴「亜麻布二十エレは上衣一着に値する」が非常に印象的な物語でした。
| [国内作家:あ行]絲山秋子 | 23:50 | comments(0) | - |
海の仙人/絲山秋子
評価:
絲山 秋子
新潮社
¥ 380
(2006-12)
宝くじに当った河野は会社を辞めて、碧い海が美しい敦賀に引越した。
何もしないひっそりした生活。
そこへ居候を志願する、役立たずの神様・ファンタジーが訪れて、奇妙な同居が始まる。
孤独の殻にこもる河野には、二人の女性が想いを寄せていた。
かりんはセックスレスの関係を受け容れ、元同僚の片桐は片想いを続けている。
芥川賞作家が絶妙な語り口で描く、哀しく美しい孤独の三重奏。


物語は“ファンタジー”と呼ばれる神様が突然現れるとこから始まります。
しかし彼が何かをするわけではありません。
いわば孤独の象徴。
そんな“ファンタジー”と同居することになる主人公の河野は過去に壮絶なトラウマがあり、それを恋人のかりんには伝えられない。
しかし元同僚の片桐には、宝くじが当たったことをかつて相談したように、打ち明けます。
かりんは“ファンタジー”を前から知っているような気がすると受け入れ、片桐は彼を知らない、ただのデジャヴュだと言い切る。
この辺りのバランスは非常にうまく、テンポの良い文体とふざけたような明るい会話で誤魔化されてしまいそうになりますが、切ないものです。
ですからその後の展開がドラマチック過ぎるような気がするんですよね。
何気ない文章や会話がうまい作家さんだと思うので、そこまで「濃く」しなくても……という気分になりました。
| [国内作家:あ行]絲山秋子 | 21:47 | comments(0) | - |
イッツ・オンリー・トーク/絲山秋子
評価:
絲山 秋子
文藝春秋
¥ 410
(2006-05)
引っ越しの朝、男に振られた。
やってきた蒲田の街で名前を呼ばれた。
EDの議員、鬱病のヤクザ、痴漢、いとこの居候―遠い点と点とが形づくる星座のような関係。
ひと夏の出会いと別れを、キング・クリムゾンに乗せて「ムダ話さ」と歌いとばすデビュー作。
高崎での乗馬仲間との再会を描く「第七障害」併録。


引越し作業中に男に振られた売れない画家・優子の一夏の男たちとの関わりを、軽い文体で描いたお話です。
とにかく読みやすい。
主人公は精神病ですし、付き合う男共もどこか「おかしな」人たちばかり。
暗くなろうと思えばいくらでも陰惨な感じに出来る設定なのに、読後感は爽やかの一言に尽きます。
構成もうまいですし、一応純文学系でありながらミステリのように「あっ!」と思うオチまであって、満足できる作品でした。
女性作家の女性を主人公とした作品だと私は、感情移入どころか嫌な女だな!と苛々してくることが多いというのに、優子は憎めないし男たち、特に「痴漢」氏のキャラクタには脱帽です。

同時収録の「第七障害」は馬術の試合中にパートナーである馬を“殺して”しまい、乗馬から離れた主人公のその後を描いたお話です。
こちらも爽やかで可愛くて好きです。
| [国内作家:あ行]絲山秋子 | 21:14 | comments(0) | - |
| 1/1PAGES |