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アンフィニッシュト/古処誠二
東シナ海に浮かぶ伊栗島に駐屯する自衛隊の基地で、訓練中に小銃が紛失した。
前代未聞の大事件を秘密裡に解決する任務を負い、防衛部調査班の朝香二尉とパートナーの野上三曹が派遣される。
通信回線というむき出しの「神経」を、限られた人員で守り続ける隊員達の日常。
閉鎖的な島に潜む真犯人、そして真実はどこに。


東シナ海に浮かぶ人口百二十人の伊栗島にある、航空自衛隊の通信中継基地で小銃の紛失事件が起きた。
その調査に訪れた防衛部の朝香二尉と、臨時にバディーとして補佐につくことになった野上三曹は、内部犯としか思えない状況と、小さな島で自衛隊員と島民が垣根のない状態で付き合う環境の良さに、頭を悩ませるが……というストーリーです。

『アンノウン』(参考)の続編として、2001年に講談社ノベルスより発売された『未完成』を改題、改訂し文庫化したものです。
これ1冊でも読めますが、朝香二尉と野上三曹の出会いでもある『アンノウン』を読んでいた方がより楽しめるかと思います。

前作に続き、小銃紛失事件という自衛隊ならではの謎をクローズドサークル風に処理して、エンタメだけではないいびつな軍隊としての悲しさや歴史を盛り込んで、上手に書き上げていると思います。
ただその前作よりもテンポが悪い気がしてなりません。
ミステリって、例えば殺人という非現実的で恐ろしい出来事によって何故か登場人物たちのテンションが上がった状態から元に戻る(謎が解ける)もののような気がするのですが、これは事件によって当たり前にテンションが下がっている気がするんです。
背徳的な高揚感がない。
閉鎖空間なものですし、探偵がやってきても連続する殺人事件のような派手な展開は望めないですし、地味なのは当然なんですが。
自衛隊を描くとなるとこのテーマにならざるを得ないのかなぁと思うと、辛くなってしまう私の読後感にもよるのかもしれません。
ただ、こねくり回した謎解きのポイントになるほどなぁと思えたですし、はっきり絡めちゃえば良かったのにと思わないでもないもう一つの謎についてもよく出来ているかと思いました。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:か行]古処誠二 | 17:44 | comments(0) | - |
七月七日/古処誠二
1944年6月、多くの民間人を抱えたままサイパン島は戦火に包まれた。
日系二世の「ショーティ」は、アメリカ軍の一員として上陸した語学兵のひとりだった。
忠誠登録を経て帰属国家を示した彼は、捕虜となって帰属国家を見失う日本人と接し、その複雑な心理をを目の当たりにする。
捕虜の禁忌に縛られ、不義の罪悪に懊悩する人々にあるのは、いつの世にも通じ、いずれの国にも通じる、社会の構図だった。


日系二世の“ショーティー”は、日本語を喋り日本に感謝をする両親に育てられた。
しかし開戦後強制収容所に入れられた経験を持つ彼は、忠誠登録をして「アメリカ人」となった。
外見は完全な日本人であるために“友軍”に“捕虜”にされるどころか殺される危険と戦いながら、戦争末期のサイパン島で日本軍の投降を説得するが……というストーリーです。

読んだのが随分前だったので再読しました。
最初に読んだ時は、悲惨な状況を描いているにもかかわらずやたらとテンポの良い読みやすい作品だという印象が強かったのですが、読み直してみると主人公の置かれた立場のあまりの酷さが染みます。
個人レベルにおいての戦争は、生き残った者が勝ちだと私は思っています。
遺伝子レベルでは完全な日本人である主人公が、その立場を利用して捕虜を捕まえたり、またわざと逃がすことで日本側の作戦を読んで叩いたりしても、どれだけ卑怯者だと蔑まれても、悪いことだとは思いません。
ですが、無残に死んでいく日本兵の方が、主人公を平気な顔でジャップと呼ぶアメリカ兵たちの方が、どれだけ幸せか。
そして捕虜となった後、誇りも教育も何もかもを捨て去って進んで米軍に協力することで、家族の情報を得ようとする少女の存在は、その後の辛い展開以上に主人公には脅威であるはずです。

作品としては、戦争をやたらと否定して人道を説くわけでもなく、凄惨さで訴えるでもなく、淡々としているのが印象的。
前述したように読みやすい文体です。
物語性も高いですし、こういう作品を映像化できないものでしょうかね。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:か行]古処誠二 | 15:42 | comments(0) | - |
アンノウン/古処誠二
評価:
古処 誠二
文藝春秋
¥ 570
(2006-11)
自衛隊は隊員に存在意義を見失わせる「軍隊」だった。
訓練の意味は何か。
組織の目標は何か。
誰もが越えねばならないその壁を前にしていた一人の若い隊員は、隊長室から発見された盗聴器に初めて明確な「敵」を実感する…。
自衛隊という閉鎖空間をユーモラスに描き第14回メフィスト賞を受賞したデビュー作。


機密事項もやりとりされる隊長室の電話から発見された盗聴器を仕掛けた人間を密かに調査するために防衛部調査班の朝香二尉が基地にやってくる。
その補佐を命じられた野上は、飄々とした彼に付き合いながら、初めて自衛隊という軍隊の「敵」を実感し興奮するが……というストーリー。
元自衛隊員が描いた中編ミステリです。
とんでもない小説を選ぶことでも有名なメフィスト賞を受賞したとはとてもじゃないが思えない佳作ぶりにまず驚かされました。
中編だということも関係しているのでしょうが、こじんまりとした印象。
事件に派手さはなく、理論的に盗聴器が仕掛けられたのはいつか、その時隊長室に出入りできたのは誰か…といったことが探偵役の朝香二尉と主人公・野上の間で語られ、条件が狭まっていくあたりはいたって普通の推理物。
ただ、自衛隊内の情景はさすが経験者。
その辺りは「濃い」のかもしれません。
またキャラクタもしっかりしていて、そこでも楽しめます。
エピローグもベタかもしれませんが大好きです。
| [国内作家:か行]古処誠二 | 22:28 | comments(0) | - |
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