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エロマンガ島の三人/長嶋有
「エロマンガ島にいって、エロマンガを読もう」。
ゲーム雑誌のそんな企画が通ってしまい、男三人は南の島へ向かう。
二泊三日のささやかな旅がそれぞれの人生をほんの少し変えることも知らずに。
疲れた心をもみほぐす表題作のほか、著著初のSF、ゴルフ小説、官能小説まで収録した異色で楽しい小説集。


短編集で
「エロマンガ島の三人(原案・バカタール加藤)」「女神の石」「アルバトロスの夜」「ケージ、アンプル、箱」「青色LED」
の計5編を収録。

異色短編集ということで、恐々手を出したのですが、何のことはない著者の作品集でした。
たしかに、表題作は実際にゲーム雑誌で行われた企画(エロマンガ島に行ってエロマンガを読もう、というもの)とそこで起きたことを原案に描かれただけあって立ち位置は普通の小説とは異なるかもしれませんが、違和感なく読めました。
ゆるい雰囲気ながらどこか緊張感があって、妙なタイトルですが、オチも爽やか。
後日談となる「青色LED」はやや蛇足な感じもしましたが、まぁよしとしましょう。

その他ですが、SFが「女神の石」と「アルバトロスの夜」ですね。
前者はあまり珍しいアイデアではないかと。
後者はなんじゃこりゃ?と思ったのが、著者のあとがき(補遺)で「『テレビゲームのゴルフ』へのオマージュ」とあって、なるほど傑作だと思いました。
しかし、なんじゃこりゃ、というのが素直な感想かもしれません。
「ケージ、アンプル、箱」は官能小説だそうですが、著者の言う「『濡れない』官能小説」というのは実に正しいと思います。
確かに主人公の女性遍歴が性描写込みで描かれていますが、これが官能小説(という目的で書かれた)とあとから読んで、びっくりしたぐらいです。
どれも、異色ではあるのかもしれませんが、著者の作品としか思えない安心感がありました。

芥川賞作家の作品集だと思って過度に期待すると駄目ですが、タイトルや表紙の雰囲気通り、穏やかな気持ちで読めば楽しめるのではないかと思います。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:な行]長嶋有 | 23:52 | comments(0) | - |
泣かない女はいない/長嶋有
ごめんねといってはいけないと思った。
「ごめんね」
でも、いってしまった。
――埼玉郊外の下請け会社に、事務として中途入社した、澤野睦美。
恋人・四郎と同棲する彼女に、不意に訪れた心変わりとは?
話題の表題作ほか、「センスなし」を収録。
恋をめぐる心のふしぎを描く魅力あふれる小説集。


短編集で
「泣かない女はいない」「センスなし」
を収録。

表題作の方は、のん気な下請け会社に滑り込んだ“泣かない女”睦美の静かな恋を描いた作品。
成就させようとかっていう気が一切なさそうな、それなのに恋人にはあっさり言ってしまう主人公の姿がいかにも長嶋作品という感じでした。
梯子を登って屋上に出るあたりとか、社長のお見舞いに行くあたりとか、二人きりで帰る時にくだらない話しかしないところが良いです。
でも、なんというか、それだけって感じでした。
その点、もう一作品の「センスなし」は良かったです。
小説にやたらと通俗的な固有名詞を登場させる手法は好きではないはずなのですが、何故か著者の結構多いそれは許せてしまう謎。
そして主人公の二種類のどうしようもない感が感じられました。
| [国内作家:な行]長嶋有 | 01:21 | comments(0) | - |
パラレル/長嶋有
評価:
長嶋 有
文藝春秋
¥ 530
(2007-06)
妻の浮気が先か、それとも僕の失職が原因か?
ともあれ僕は、会社を辞め離婚した。
顔面至上主義のプレイボーイ津田と、別れてもなお連絡が来る元妻、そして新しい恋人……。
錯綜する人間関係と、男と女の行き違いを絶妙な距離感で描く長嶋有初の長篇。
斬新な構成と思わず書きとめたくなる名言満載の野心作。


バツ一の七郎。
夫婦関係がおかしくなったのは七郎が仕事を辞めたからで、結果彼は無職であるが、最初に“裏切った”のは妻が先だ、とこだわっている。
しかし浮気相手と依然付き合っている別れた妻からは頻繁に他愛のないメールがくる。
一方大学時代からの友人・津田は複数の女性関係をいちいち七郎に告げなくては気がすまないらして……というストーリー。

設定だけ書き出すと大小様々な事態が深刻であるのに、奇妙な明るさがある小説です。
小説的だと思われる出来事もありますが、その中に妙にリアルなものが挟まれて(というか底辺にあって)います。
特に別れた妻の身勝手な行動は、不倫はともかく、凄くわかるもので、女のいやらしさがさらっと描かれていてゾッとしました。
いや、ゾッとすると同時に苦笑したくなる、というのが全体の雰囲気でしょう。
暗くなれません。
一種類ではない過去と現在が行ったり来たりする構成も好み。
“この世はすべてラブ&ジョブ”という言葉一つにもにやにやしてしまう満足感でした。
| [国内作家:な行]長嶋有 | 18:06 | comments(0) | - |
猛スピードで母は/長嶋有
評価:
長嶋 有
文藝春秋
¥ 400
(2005-02)
「私、結婚するかもしれないから」「すごいね」。
小六の慎は結婚をほのめかす母を冷静に見つめ、恋人らしき男とも適度にうまくやっていく。
現実に立ち向う母を子供の皮膚感覚で描いた芥川賞受賞作と、大胆でかっこいい父の愛人・洋子さんとの共同生活を爽やかに綴った文学界新人賞受賞作「サイドカーに犬」を収録。


短編集で
「サイドカーに犬」「猛スピードで母は」
を収録。

表題作が芥川賞なのですが、それらしい雰囲気を漂わせつつ、くらべるならば他の受賞作よりも“芥川賞臭”が薄いと思いました。
主人公は父のいない小学六年生の男の子。
母とはうまくやっていると自負している彼の、子供とは思えない淡々とした視線の中に、母へのはっきりした思いが見えます。
加えて恋多き、とまではいかない程度の母親もやっぱり息子を愛していて、著者はそういうつながりを信じているのだろうと思えて気持ちが良いです。
物語のポイントとなる霧の中の出来事も鮮やか。

一方で同時収録の「サイドカーの犬」は芥川賞受賞作より好きでした。
ある日母が家出し、かわりに「洋子さん」という女の人が家に出入りするようになる。
母の決まりごとを次々と、そしてあっさりと破る生活を見せる洋子さんに憧れる、そんな女の子が主人公でした。
その一夏の思い出を、久しぶりに会う弟を待ちながら会話しながら思い出す視点が好きです。


最近本屋さんで、映像化原作本のコーナーに並んでいて、それを機会に再読。
どうも「サイドカーに犬」の方が映画化されたようですね。
| [国内作家:な行]長嶋有 | 18:33 | comments(0) | - |
ジャージの二人/長嶋有
評価:
長嶋 有
集英社
¥ 450
(2007-01)
失業中で小説家志望の息子。妻はよその男と恋愛中。
三度目の結婚生活も危うそうな、写真家の父親。
そんな二人が軽井沢の山荘で過ごす、とりとめのない夏の終わりの思い…。


「普通」の「家族」の距離感を描くのが巧い作家さんだと思っているのですが、この作品でも同じ感想を持ちました。
色々と問題は山積していて、一歩踏み出せばもっとドラマチックに、もっとぐちゃぐちゃな人間関係にすることは簡単だというのに、「普通」であり続けるバランスの良さ。
この作品では父と子の関係がメインです。
表題作「ジャージの二人」の続編「ジャージの三人」も収録。


まったく作品と関係がない余談ですが、私の中では「お気に入りの作家さんの作品を集めていたら集英社のものだけハズれる」というジンクスがあります。
微妙にこの作品も当てはまっているので、これを少しでも良かったと思われたら他の作品にも手を出していただきたいですね。
| [国内作家:な行]長嶋有 | 19:06 | comments(0) | - |
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