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春、バーニーズで/吉田修一
妻と幼い息子を連れた筒井は、むかし一緒に暮らしていたその人と、偶然バーニーズで再会する。
懐かしいその人は、まだ学生らしき若い男の服を選んでいた。
日常のふとしたときに流れ出す、選ばなかったもうひとつの時間。
デビュー作「最後の息子」の主人公のその後が、精緻な文章で綴られる連作短編集。


連作短編集で
「春、バーニーズで」「パパが電車をおりるころ」「夫婦の悪戯」「パーキングエリア」「楽園」
の4編を収録。

「最後の息子」(参考)は最初に読んで、その後も一番好きな作品なので、紙質も構成も贅沢なこの文庫は、中身も嬉しい作品でした。
淡々とした描写ですが、やっぱりうまい。
「最後の息子」の印象が強すぎて、表題作にもなっている冒頭の「春、バーニーズで」の再会にこの後お話はどこへいくのだ?と疑問に思ったのですが、「夫婦の悪戯で」でノックアウト。
これは主人公の筒井とその妻・瞳が、会社の元後輩の結婚式に「理想の夫婦だ」と呼ばれた大阪のホテルで、お互いに一つだけ嘘をついてより相手を驚かせた方が勝ちというゲームをするという内容です。
そこで筒井はぽろっと本当のことを言ってしまう。
その動揺が見事。
この手の夫婦の会話となると「停電の夜に」(参考)を思い出してしまうのですが、あちらが隠し事を打ち明けていく静かな構成なのに対し、こちらは嘘という建前と一つだけという制約が鮮やかでした。
見かけより中身は短い作品集ですし、あきらかに正当な続編ではないので、はじめてでも気軽に手に取れるかと思います。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:や行]吉田修一 | 16:54 | comments(0) | - |
7月24日通り/吉田修一
地味で目立たぬOL本田小百合は、港が見える自分の町をリスボンに見立てるのがひそかな愉しみ。
異国気分で「7月24日通り」をバス通勤し、退屈な毎日をやり過ごしている。
そんな折聞いた同窓会の知らせ、高校時代一番人気だった聡史も東京から帰ってくるらしい。
昔の片思いの相手に会いに、さしたる期待もなく出かけた小百合に聡史は……。
もう一度恋する勇気がわく傑作恋愛長編!


地味で目立たないOL小百合は、そんな自分にあきらめて生まれ育った地方都市から離れずに生きている。
楽しみは、その街をポルトガルのリスボンに見立てて想像すること。
何の変哲もないバス停が、広場が、通りが、鮮やかに小百合の心の中で変化していくのだ。
そんなある日、同窓会の知らせがやってくる。
最初は嫌がっていた小百合だったが、初恋の先輩もやってくると知り……というストーリー。

読みやすい恋愛小説でした。
特に派手なことがあるわけでなく、それでいて主人公の生活や恋愛観の大きな転換点をさらりと描く様はうまいです。
章立ても、後からなるほどと思わせてくれる構成で好きです。
主人公の小百合の軽いマイナス思考と諦観は、共感しやすいですしね。
誰も彼もがお姫様でいられるわけがありません。
自嘲まではいかない、その語り口がいいです。
自分の街をリスボンに見立てる遊びを楽しむことも、説明だけ見れば夢見がちな阿呆女のようですが、決して誰にも口にはしないことで女性としての可愛らしさと折り合いをつけている現実的な感性をよくあらわしているかと。

しかし著者の作品にしてはいやにストレートで万人受けしそうな内容だな、と思った一方で、読み返してみると酷い男ばかり出てきますね……。
高校時代の初恋の先輩も、その先輩とかつて付き合っていた美人と結婚し小百合を妻の話し相手に付き合わせる上司も、バスの中で声をかけてしまった画家志望の警備員も、果ては父や弟まで、私なら絶対に付き合わないですよ。
そして特に身内二人にむかつく!
血がつながっているからこその汚い甘えを描くのが本当にうまいなぁと感心はしますし、身勝手なのはもちろん小百合にだってある部分ですが、勝手に腹を立ててしまいました。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:や行]吉田修一 | 10:48 | comments(0) | - |
長崎乱楽坂/吉田修一
評価:
吉田 修一
新潮社
¥ 420
(2006-12)
風呂上りの火照った肌に鮮やかな刺青を躍らせた猛々しい男たちが、下穿き一つで集い、日々酒盛りに明け暮れる三村の家。
人面獣心の荒くれどもの棲む大家族に育った幼い駿は、ある日、若い衆が女たちを連れ込んでは淫蕩にふける古びた離れの家の一隅に、幽霊がいるのに気づくのだった。
湾の見える町に根を下ろす、昭和後期の地方侠家の栄光と没落のなかに、繊細な心の成長を追う力作長編。


冒頭から、男の体臭がしてきそうな小説でした。
主人公は駿と悠太の兄弟。
と言っても、ほとんどが駿の視点で綴られ、最後の最後に弟に変わります。
その変更は駿の内心の葛藤がおさまり、生き方を選択したことを象徴しているのでしょうが、幼かったがためにヤクザの一家で子供の頃からそういった大人たちから影響を受け、そして受けきれないでもがいていた駿とは違う生き方を選んだ悠太の視点は残酷です。
そしてラストも。
普通の人間なら逃れたいと思うようなヤクザ一家の荒んだ風景もまた家族だったのだ、と言われているようでした。
| [国内作家:や行]吉田修一 | 17:46 | comments(0) | - |
東京湾景/吉田修一
評価:
吉田 修一
新潮社
¥ 500
(2006-06)
「愛してないから、こんなに自由になれるの」「それでも、お前と一緒にいたかったんだよ」。
品川埠頭の倉庫街で暮らし働く亮介が、携帯サイトの「涼子」と初めて出会った25歳の誕生日。
嘘と隠し事で仕掛けあう互いのゲームの目論見は、突然に押し寄せた愛おしさにかき消え、二人は運命の恋に翻弄される。
東京湾岸を恋人たちの聖地に変えた、最高にリアルでせつないラブストーリー。


これをどうドラマ化したのかが非常に気になる作品でした。
小説的な物語だからです。
亮介は品川埠頭の船積倉庫で働き、「涼子」はお台場の大手石油会社で働く。
私のような地方在住者だとうまく地理が浮かびませんが、品川埠頭とお台場は非常に近いものの、間に東京湾があるらしい。
海を挟んだ「あちら側」と「こちら側」なのです。
そういった地理的な要素と作中登場する小説家が描く亮介の姿と現実という虚構と現実、などなど恋愛小説にありがちな「作りすぎ」があちこちに散らばっていて、物凄く冷静に読ませてくれる作品です。
だからこれをどう映像化したのか、気になって仕方がありません。
作品自体はうまくまとまっていて読みやすくわかりやすい。
でも作中のどの登場人物にも個人的には感情移入が一切出来ないので、出来云々以前の「感動」はありませんでした。
恋愛小説を読むのに私が向いていないという考えが頭によぎります。
| [国内作家:や行]吉田修一 | 11:12 | comments(0) | - |
熱帯魚/吉田修一
熱帯魚
熱帯魚
吉田 修一

大工の大輔は子連れの美女、真実と同棲し、結婚を目指すのだが、そこに毎日熱帯魚ばかり見て過ごす引きこもり気味の義理の弟・光男までが加わることに。
不思議な共同生活のなかで、ふたりの間には微妙な温度差が生じて…。
ひりひりする恋を描く、とびっきりクールな青春小説。


短編集で
「熱帯魚」「グリーンピース」「突風」
の3編を収録。
3作ともイライラさせられる男が主人公で、その空回りぶりが凄い。
こういう男っているんでしょうね〜。
特に「グリーンピース」は、恋人から心が離れていくのはわかるのですが、その表現の巧さとあいまって、不愉快で不愉快で!
受け入れられるとしたら「突風」でしょうか。
タイトルが内容をよく表していると思います。
| [国内作家:や行]吉田修一 | 21:02 | comments(0) | - |
パーク・ライフ/吉田修一
パーク・ライフ
パーク・ライフ
吉田 修一

公園にひとりで座っていると、あなたには何が見えますか?
スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。
なんとなく見えていた景色がせつないほどリアルに動きはじめる。
日比谷公園を舞台に、男と女の微妙な距離感を描き、芥川賞を受賞した傑作小説。


本当に!芥川賞とは相性が悪い…。
地下鉄での出会いや公園での再会といった流れは嫌いじゃないですし描写も好きなのですが、全然心に残らない。
妙に乾燥した感じのお話でした。
| [国内作家:や行]吉田修一 | 16:22 | comments(0) | - |
最後の息子/吉田修一
最後の息子
最後の息子
吉田 修一

新宿でオカマの「閻魔」ちゃんと同棲して、時々はガールフレンドとも会いながら、気楽なモラトリアムの日々を過ごす「ぼく」のビデオ日記に残された映像とは…。
第84回文学界新人賞を受賞した表題作の他に、長崎の高校水泳部員たちを爽やかに描いた「Water」、「破片」も収録。
爽快感200%、とってもキュートな青春小説。


短編集で
「最後の息子」「Water」「破片」
の全3編を収録。
どれもストーリーより読後感が良いので好きです。
表題作は笑えました。
こんな話で笑って良いのかと思いましたが、笑えたんだから仕方がない。
閻魔ちゃんが可愛いかったです。
「Water」は直球の青春小説で、「破片」は暗い、と全然。
長崎に縁がある方や、水泳部に過去所属したことのある方はより身近に感じられるかもしれません。
芥川賞作家ということで純文学かと思いきや、中間小説ではないでしょうか。
近作は全然手にとってないのですが、この作品に関してはおすすめです。
(というか「最後の息子」と「Water」が好きなだけかもしれません)
| [国内作家:や行]吉田修一 | 21:26 | comments(0) | - |
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