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春のオルガン/湯本香樹実
評価:
湯本 香樹実
新潮社
¥ 420
(2008-06-30)
小学校を卒業した春休み、私は弟のテツと川原に放置されていたバスで眠った――。
大人たちのトラブル、自分もまた子供から大人に変わってゆくことへの戸惑いの中で、トモミは少しずつまだ見ぬ世界に足を踏み出してゆく。
ガラクタ、野良猫たち、雷の音……ばらばらだったすべてが、いつかひとつでも欠けてはならないものになっていた。
少女の揺れ動く季節を瑞々しく描いた珠玉の物語。


小学校を卒業した春休みに、トモミはどうしようもない思いを抱えていた。
両親のこと、隣の家との境界線争いのこと、祖父のこと、弟のこと、そして死んだ祖母のこと……。
弟と共に家出をすることでトモミの世界は変わっていく……というストーリーです。

何というか、凄く痛いお話でした。
小説としては好きな話ではありませんでしたし、結末に納得もいきませんでした。
ただ痛い。
リアルだとは思いません。
主人公の女の子はある意味普通ではない感性を持った子だと感じました。
祖母の死というのが主人公にとっての重しなのですが、小学生でそういうことを考えるというのが凄い。
弟が幼稚なだけに、大人になる階段をのぼりかけてしまっている彼女が悩む姿が余計に痛々しいのです。
冒頭で彼女は「怪物」の夢を見ます。
「怪物」は彼女自身です。
そんな女の子に、周囲は気付いているようで気付いておらず、そして気付いているようで気付いていない。
大人は無神経だと一概に言うことも出来ず、自分を守ってくれるとも言えず、そして自分もソレに近付いているのです。

こういう話を読むと、そして私自身の経験からも、核家族ではなく異なる世代の親族が一緒に住む(あるいは近くにいる)ことの良さが染みます。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:や行]湯本香樹実 | 21:23 | comments(0) | - |
夏の庭―The Friends/湯本香樹実
町外れに暮らすひとりの老人をぼくらは「観察」し始めた。
生ける屍のような老人が死ぬ瞬間をこの目で見るために。
夏休みを迎え、ぼくらの好奇心は日ごと高まるけれど、不思議と老人は元気になっていくようだ――。
いつしか少年たちの「観察」は、老人との深い交流へと姿を変え始めていたのだが……。
喪われゆくものと、決して失われぬものとに触れた少年たちを描く清新な物語。


仲良し三人組の一人の祖母が死んだことをきっかけになり、人が死ぬのを見てみたいと、独居老人の観察をはじめた夏。
すぐにその不審な行動はばれてしまい、そこから老人との交流が始まったのだが……というストーリーです。

久しぶりに再読しました。
「久しぶり」といっても10年以上前の話で、読後感は全然違います。
人が死ぬということと、その裏返しの友達や家族の大切さを、いかにも「少年の視点」らしい文章で描いていて、あざとさがないわけではないですが、素直に世界に浸れました。
最後はもうボロ泣きでした。
本で泣いたというよりは、自分の近しい人が亡くなった際のことを思い出してしまって、感傷的になっただけなのですが……。
そういう感情を思い起こさせてもらったぐらい浸ったということなのでしょう。
また、前述したように主人公の少年からの視点という描写がみずみずしくて好きでした。

子供の頃に読んだ際には、ちょっと怖かったのを憶えています。
誰かが死ぬということに現実感が全然なくて、思えば作中の子供たちのように素直に死に関心があるというわけではなく、ちょっとした憧れを持っていました。
その幼い考えを真っ向から諭されたような気がして、怖かったのだと思います。

大人でも読めますし、児童文学としては、安心して子供に薦められる作品だと思います。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:や行]湯本香樹実 | 12:08 | comments(0) | - |
ポプラの秋/湯本香樹実
評価:
湯本 香樹実
新潮社
¥ 420
(1997-06)
夫を失ったばかりで虚ろな母と、もうじき7歳の私。
二人は夏の昼下がり、ポプラの木に招き寄せられるように、あるアパートに引っ越した。
不気味で近寄り難い大家のおばあさんは、ふと私に奇妙な話を持ちかけた―。
18年後の秋、お葬式に向かう私の胸に、約束を守ってくれたおばあさんや隣人たちとの歳月が鮮やかに甦る。
世界で高い評価を得た『夏の庭』の著者が贈る文庫書下ろし。


夫を亡くした母もどこかおかしければ、主人公の千秋も7歳にしてそれらのことを敏感に感じ取って心のバランスを崩し、熱を出してしまいます。
しかし母一人子一人、いつまでも母が看病するわけにはいかず、そんな時昼間は大家のおばあさんの家で寝ていることになり…というお話。
とにかくおばあさんは不気味で、その気持ちが非常によくわかる。
また形式としては、アパートを離れ大人になった千秋が昔を思い出すものです。
大人の目線が入ることによって、より主人公に感情移入しやすかったのかもしれません。
ですからその後の二人の奇妙な交流や、色々とありつつも皆良い距離感で付き合っている他のアパートの住人たちとの触れ合いも、すべてが心地良かったです。
| [国内作家:や行]湯本香樹実 | 22:09 | comments(0) | - |
西日の町/湯本香樹実
西日の町
西日の町
湯本 香樹実

西日を追うようにして辿り着いた北九州の町、若い母と十歳の「僕」が身を寄せ合うところへ、ふらりと「てこじい」が現れた。
無頼の限りを尽くした祖父。
六畳の端にうずくまって動かない。
どっさり秘密を抱えて。
秘密?
てこじいばかりではない、母もまた…。
よじれた心模様は、やがて最も美しいラストを迎える。


肉親の死というのは、えてして少年時代に特殊な思い出として残るものですが、この作品はそれと家族を非常に美しく描いた話でした。
ありがちといえばありがち。
私が嫌う薄くて字の大きな文庫の児童文学寄りの作品。
ですが、西日の美しさを想像して、心に残る話でした。
北九州の「K」という町、つまり小倉ですが、私も1年お世話になった場所です。
情景が浮かんでより好印象になっている点を差し引いても、結構好きです。
| [国内作家:や行]湯本香樹実 | 17:00 | comments(0) | - |
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