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11月そして12月/樋口有介
評価:
樋口 有介
中央公論新社
¥ 680
(2009-10-24)

高校も大学も中退したぼくは、カメラを手に都会の生き物を撮り歩いている。
退屈な人と言われ続けた二十二年の人生は、明夜と出会った頃から変わりはじめた。
父親の不倫、姉の自殺未遂、そして「明夜とは二度と関わるな」という男の出現。
事件と真実に触れ、苦しくても確かな一歩を踏み出していく姿を鮮やかに描く傑作青春小説。


ぶらぶらとあてもなく写真を撮っていた「ぼく」は、その途中犬の散歩をしていた少女と出会う。
犬が売り物だと聞き、ペットショップから彼女の行方を探す「ぼく」だが……。
そして、姉の不倫と自殺未遂、父親の浮気疑惑と相次ぐ家族の問題。
その時「ぼく」は……というストーリーです。

青春小説です。
主人公は高校中退・大学中退で無気力な青年。
勝気な姉と面倒な両親という設定は著者の作品では珍しいものではない気がしますが、ミステリではないということになかなか頭が慣れてくれませんでした。
加えて、こう、青春らしい何かというがなかなか伝わってこない。
「負ける」ことをようやく主人公が受け入れて、「大人」になっていくということなのか……それにしてもその転機となる少女との出会いがぐだぐだのような。
男が女との出会いで人生を思い直すのは普遍的なテーマですが、しっくりこなかったのはそこまでの魅力を明夜に感じなかったせいかもしれません。

また、主人公に魅力が乏しいのも一因。
バイト先から住所を割り出すって、一種のストーキングじゃないですか?
別シリーズのように探偵で、事件に関係しているなら仕方がありませんが、普通はないです。
何故店で普通に再会させてやらなかったのか。
彼の駄目さを表現するにしても、個人的に気持ちが悪いです。
比べるものではないのかもしれませんが、もともと著者の作品に登場する男たちは、ろくでもないけれど憎めない魅力がある人間が多いもの。
それが作品の面白さにも繋がっていると思っているので、きつかったです。
主人公はその域に達する前の状態なのかもしれませんがね。

手に入りにくい作品だっただけに、文庫化を非常に楽しみにしておりましたが、全体的に薄い印象でした。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:は行]樋口有介 | 12:09 | comments(0) | - |
ピース/樋口有介
評価:
樋口 有介
中央公論新社
¥ 720
(2009-02)

埼玉県北西部の田舎町。
元警察官のマスターと寡黙な青年が切り盛りするスナック「ラザロ」の周辺で、ひと月に二度もバラバラ殺人事件が発生した。
被害者は歯科医とラザロの女性ピアニストだと判明するが、捜査は難航し、三人目の犠牲者が。
県警ベテラン刑事は被害者の右手にある特徴を発見するが……。


田舎町で突如発生した連続バラバラ殺人事件。
第一の被害者は順風満帆な人生を送っていたはずの歯科医、そして二人目は東京出身のピアニストで、スナック「ラザロ」に勤めていた女性だった。
同一犯と考えられたこの事件だったが、被害者に接点は見つからない。
そして三人目が……というストーリーです。

読後の印象は「あっさりうまい」でした。
バラバラ殺人を扱っていて、舞台は閉鎖的な田舎町、重要な登場人物は過去に何かありそうな青年で、毒々しくしようと思えばいくらでも出来そうなのに、物語は淡々と進みます。
「淡々と」というのは悪い意味ではありません。
山はいくらでもあります。
事件とは関係がなさそうな描写もあり、謎自体が実は殺人だけではなく絡まっていてですから、これがうまいのですよ。
しかも最後になるほどと思わせてくれます。

青春ミステリだけではない著者の良さが詰まっているかと思います。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:は行]樋口有介 | 22:21 | comments(0) | - |
プラスチック・ラブ/樋口有介
評価:
樋口 有介
東京創元社
¥ 672
(2009-06-20)

公孫樹の枯葉がふりそそぐ十二月、中学時代の同級生・竹田寛子が、ラブホテルで殺害された。
高校二年生の木村時郎は、寛子の最近の様子が気にかかり、彼女の高校の同級生を訪ねた。
そして寛子が、“プラスチック・ラブ”という謎の言葉を残していたことを知る。
その帰り、時郎は事件を取材している柚木草平と出会う――。
四季の移ろいと事件を綴った、青春私立探偵シリーズ番外編。


連作短編集で
「雪のふる前の日には」「春はいつも」「川トンボ」「ヴォーカル」「夏色流し」「団子坂」「プラスチック・ラブ」「クリスマスの前の日には」
の計8編を収録。

柚木草平シリーズ番外編という紹介がされておりますが、全編通じて主人公は木村時郎という少年です。
表題作でミステリ色の濃い「プラスチック・ラブ」にのみ、彼が登場。
シリーズ作に愛着がある読者(私を含む)だと、美味しいところで登場するなぁと思えるでしょうが、シリーズ番外編と言うにはやや問題があるかと。
時々別の作品の主要人物を通りすがりや会話にのみ登場させて、作家買いをしている読者を喜ばせてくれる著者がいますが、そんな感じです。
シリーズ作かと期待して購入するとがっかりすることもあるかもしれません。

ただ、系統が同じということで「青春私立探偵シリーズ番外編」と紹介しているのだとしたら、納得。
柚木のミニチュア版というような雰囲気の主人公です。
青春ミステリはお手の物の著者ですが、特にミステリばかりというわけではないのも良いですね。
(柚木のような職業ならまだしも、ただの高校生で殺人事件にばかり遭遇するというのは問題があります)(そんな作品もすぐに頭に浮かびますが)
小気味良い会話とアンニュイな雰囲気が魅力的でした。
印象に残っているのは表題作以外だと「川トンボ」です。
どうも幼馴染み設定に弱いです。
あと「夏色流し」はうまいですね。

全作パラレル設定だと考えざるを得ないのですが(記述に矛盾があります)もしそうではないと考えるととんでもない女の敵。
それもまた楽しいというか、憎めないのは著者のキャラクタの特色のような気がします。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:は行]樋口有介 | 21:34 | comments(0) | - |
木野塚佐平の挑戦だ/樋口有介
現職の総理大臣が急逝し大混乱の世間をよそに、美人ニュースキャスターの姿に煩悶する木野塚氏。
些細な事件を解決し、糊口をしのぐ日々だったが、突然ケニアから桃世が帰ってきたかと思うと、オタク男の奇妙な相談をはじめ急な依頼が相次ぐ。
それらが、なんとあこがれの大事件に繋がって――。
桃世とともに木野塚氏は今日も行く。
ユーモア・ハードボイルド長編、初文庫化、だ!


木野塚佐平シリーズ第2弾。

相変わらずハードボイルドを目指す木野塚氏の探偵事務所は閑古鳥が鳴く状態。
それに秘書の桃世が駐ケニア大使に任命された父親と共にアフリカに旅立ってからは、何となく気が抜けたようになっていた。
そこに突然帰国する桃世。
しかも、急逝した総理大臣の背景に迫るような事件が舞い込んできて……というストーリーです。

シリーズ2作目で長編作品となっています。
実業之日本社より2002年に発売された『木野塚佐平の挑戦』の大幅改稿、改題作品となっております。
未文庫化作品で(もちろん未読で)非常に気になっていたので、本当に東京創元社には感謝したい気持ちでいっぱいです。
ですが、前作とは相当に雰囲気が違いました。
ユーモア・ミステリが苦手で、素直に前作を楽しめなかった私個人としてはこちらの方が面白かったのですが、ややアンバランスかな?と思う部分も。
事件が結構大きいだけに、作品のテイストと合っていないと感じる方は多いと思います。
ただ、ウザイおやじだなぁと思っていた木野塚氏に何とも言えない愛着が沸いてきたのが不思議なところ。
著者あとがきによれば新たな仲間が加わっての第3弾もあるということなので、それを楽しみにしたいです。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:は行]樋口有介 | 22:23 | comments(0) | - |
木野塚探偵事務所だ/樋口有介
経理課一筋37年で警視庁を定年退職した木野塚氏は、ハードボイルド探偵に憧れ探偵事務所を開設する。
しかし、依頼どころかグラマーな美人秘書もやってこない。
そんなある日、近所づき合いで業界紙に広告を出したところ、記念すべき最初の依頼が。
その事件は、なんと金魚誘拐事件だったのだ。
愛すべき老人探偵の活躍を描いた、ユーモア・ハードボイルド連作集。
堂々登場、だ!


連作短編集で
「名探偵誕生」「木野塚氏誘拐事件を解決する」「男はみんな恋をする」「菊花刺殺事件」「木野塚氏初恋の想い出に慟哭する」
の計5編を収録。

新装版は差し替えることにしているので、この作品も講談社文庫のものでの感想は消去して創元推理版にいたします。
講談社文庫のものでは長編というより単にタイトルをなくしたとしか思えない連作短編形式(雑誌掲載時にはタイトルがあったとのことでした)というものでしたが、創元推理文庫ではそれが復活したことで違和感がなくなっています。
こちらの方がおすすめ。

ユーモア・ハードボイルドとの紹介がまさしく正しい、どこか間抜けな木野塚氏を主人公とした作品です。
彼に相応しく、飛び込んでくる事件は良く言えば非常に庶民的なものばかり。
それに対応する木野塚氏の対応もやはり抜けていて、なりゆきで秘書となった梅谷桃代のきりりとした態度とやり口と比べると笑えてしまうものでしょう。
ここで素直に笑えるか、60歳を過ぎた男としてはあんまりすぎる主人公にどちらかというと苦笑してしまうか、それで読後感に大きな差が発生するかと思います。
私は後者で、ストレートに楽しむことができなくて、むしろ痛々しく思ってしまいました。
解説にユーモア・ハードボイルドの例が挙げられているのですが、そこで登場する荻原浩の「ハードボイルド・エッグ」(参考)がこれまた苦手作品だったことを思えば、私にはこのジャンルを楽しむ土台が欠けているのではないかと思います。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:は行]樋口有介 | 19:54 | comments(0) | - |
不良少女/樋口有介
金欠のためあちらこちらから探偵業のアルバイトを引き受け糊口をしのぐ、俺・柚木草平。
吉島冴子の従姪に届いた不審な手紙を調査する「秋の手紙」。
深夜に出会った金髪の少女が巻き込まれた事件を描く「不良少女」。
飲み屋で意気投合した美女からの仕事「スペインの海」。
四件の憂鬱なアルバイトの顛末と柚木自筆のエッセイを収録した、ファン待望の連作短編集。
文庫オリジナル。


柚木草平シリーズ第7弾。

短編集で
「秋の手紙」「薔薇虫」「不良少女」「スペインの海」
の4編に、柚木自筆のエッセイ
「名探偵の自筆調書」
を加えた計5編を収録。

安定した作風の短編集でした。
実は表題作だけ苦手です。
他の、見知らぬ歯科医から手紙を受け取り困っているという愛人・冴子の従姪の依頼を受ける「秋の手紙」や、やり手代議士の死後に飼い犬や飼い猫が立て続けに死んだことで柚木に依頼が舞い込む「薔薇虫」、飲み屋で知り合った女性にやっかいごとを頼まれる「スペインの海」も、もちろん「不良少女」もすべてほろ苦いラストになっています。
それが好きだったはずなのに、「不良少女」は何だか苦過ぎて……。
著者は魅力的で美しい女性を次々と登場させながら、どんな少女であれ(主人公の小学生の娘でさえ)「女というものは油断がならない生き物だ」というポリシーで描いている気がします。
そのままのスタンスで主人公の柚木はいい女に弱く、耳障りの良い言葉を呟いておきながら、決して女を女というだけで信用していない、嫌な男です。
そんな男が「不良少女」では、自分を見失っている少女の「存在を信じる」と言うのですから……。
これは私の感傷でしょう。
他3作はどれも小気味良いストーリーだと思いますが、特に「スペインの海」は好き。
物事は簡単な方が楽です。

著者のあとがきによると「秋の手紙」と「薔薇虫」、そして「不良少女」と「スペインの海」の間には文体の改革があったとか。
あまりそういったことを気にしない私は、「薔薇虫」から「不良少女」を立て続けに読んだ最初の方で違和感を憶えたぐらい(しかもその違和感を無視したので、後から読んでなるほどと思った)でしたが、ずっと樋口作品を追いかけている方はその変化も1冊で味わえるこの作品集は魅力的ではないかと思います。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:は行]樋口有介 | 15:47 | comments(0) | - |
雨の匂い/樋口有介
評価:
樋口 有介
中央公論新社
¥ 720
(2007-10)
癌で入院中の父親と寝たきりの祖父、二人の介護とアルバイトで日々を過ごす大学生の柊一。
塗装工だった祖父の代理で、ある家の塀塗りを引き受けるが、同じ頃、謎めいた少女・李沙と出会って関係を深めていく。
やがて町内で放火事件が発生し……。
降りしきる雨の中で育まれていくのは愛か、殺意か。
著者真骨頂の切ないミステリー。


癌で入院中の父親を見舞った後、柊一は家を出て行った母親と再会し、再婚相手の事業がうまくいっていない彼女に父親の生命保険金の無心をされる。
かわして家に帰れば、寝たきりなのに元気が余っているような祖父の介護があり、アダルトビデオ専門ショップでのアルバイトもある。
そんななかお節介な隣人から塀塗りを頼まれ……というストーリー。

一体どこへ行くのかなぁと思いながらのんびり読んでいたら、びっくりさせられました。
解説にもある通り、ちょっと無気力な男の子の主人公と出会う元気な女の子という組み合わせや、いかにもな会話は、いつもの樋口作品なのに、手触りが違う。
私のように漫然と読んでいると、それが何のせいか、何を意味するのかを気付けず驚くことになるかと思います。
上質なミステリですね。
ただ、登場人物たちのキャラクタにややうんざり。
いるよねこういう人たち!そしてあるよねこういう人間関係!という切り口がうますぎて、正直嫌な気分になりました。
気分が落ち込んでいる時には読まない方が良いかと思います。
(私は寝る前に読んでまともにに影響を受けて、大嫌いな親戚が夢に登場してきました。疲れた……)
主人公の柊一のけだるい様子と、梅雨時のじめっとした空気が全編に漂う、丁寧な作品です。
| [国内作家:は行]樋口有介 | 13:16 | comments(0) | - |
誰もわたしを愛さない/樋口有介
春の訪れとともに、担当編集者が変わった柚木草平。
行きずりの犯行と思われる女子高校生殺人事件に気乗りがしないものの、原稿料アップにつられルポを引き受ける。
メガネ美女の新担当、エッセイスト、おなじみ吉島冴子に娘の加奈子と、次々現れる美女に翻弄され、さらに女子高校生にも圧倒されつつ調査を進める柚木。
哀しくも、周到に仕組まれた事件のからくりとは。
シリーズ第6弾。


柚木草平シリーズ第6弾です。
以前講談社文庫で出版されていたものの改訂版となるので、いつものように以前の感想は消して差し替えます。

担当者の石田が編集部次長に昇進したのを機に、柚木の担当が新人の女性・小高直海に代わる。
その最初の仕事として提示されたのが、ラブホテルで女子高校生が行きずりの男とみられる犯人に殺された事件のルポ。
到底犯人検挙が遠そうな事件に柚木は難色を示すが、丸め込まれて調査することに。
しかし、刑事時代の伝手を使って資料を集めた柚木は、違和感に気付き……というストーリー。

いつもは出版社からの仕事は二の次で美女絡みの探偵業に励む柚木ですが、今回はその出版社側に美女が登場したためか、そのまま依頼された事件を調べる形式です。
新たな登場人物となった直海は、これまたいつものように美女であるだけでなく、強気な女性。
著者は女性に偏見があるのかと邪推してしまいたくなるぐらい、いつもの言動がきつい、でも可愛いキャラクタです。
彼女を得て、そしていつものように前妻や娘や愛人の冴子に振り回されながら事件を追いかけていく様は、安定感があります。
事件は地味で、展開にも派手さはないですが、丁寧な作りです。
無理が感じられません。
本来ならばこれ1作で感想を考えるべきでしょうが、先日シリーズ第5弾として発売された「夢の終わりとそのつづき」が習作めいた感想を持たせるものだっただけに(参考)余計に文章や構成のうまさが目立ったかと思います。
(このシリーズ、創元推理でまとめて刊行されるのは嬉しいのですが、順序はもとのものとバラバラです。その理由については本書の伯方雪白氏の解説が詳しいので参考にして下さい。理由には正直気が抜けました)
| [国内作家:は行]樋口有介 | 20:51 | comments(0) | - |
船宿たき川捕物暦/樋口有介
江戸岡っ引きの総元締め米造、小野派一刀流の「青鬼」真木倩一郎。
白河藩のお家騒動、田沼意次の暗躍……。
米造の娘お葉のかどかわしを発端として米造と倩一郎が出会い、その出会いが新たな事件を呼ぶ。
江戸情緒あふれる著者初の時代小説。


小野派一刀流佐伯道場で師範代として剣を振るう倩一郎は、一人住まいの長屋に十年ぶりに出会う友人・天野を迎える。
養子になり新たに白河藩の家督を相続する松平定信の側用人となったという天野の話は、致仕した父に従い浪人となった倩一郎が実は御落胤ではないかという噂がたっているというものだった。
ありえないと倩一郎は言うものの、一度定信に会って欲しいという友に首を縦に振る。
その道行き、かどかわしに遭遇し娘を救い出した倩一郎だったが……というストーリー。

現代ミステリ作品を多く書いてきた著者初の時代小説ということで、大変期待して読みました。
時代小説の中には「事件解決する」という、そのままミステリと言ってよいような作品が多いので、風俗をきちんと調べて書ききることが出来れば、かなり面白いものが出来るのではないかと思ったからです。
しかし、ちょっと違和感の方が強い作品でした。

主人公・倩一郎の立ち位置がちょっと曖昧で、どんな理由であれ人を斬らないとならない事件に巻き込まれるのにそこまで積極的な理由がよくわかりません。
お葉との関係がもっとしっとり描かれていれば良いのでしょうが……。
そのお葉の性格、加えてそもそも主人公の性格もですが、いかにも樋口作品のキャラクタらしくて、時代小説に合わない気がします。
これは好みなのでしょうが……時代小説に出てくるヒロインといえば情の濃い大人の女性が多いものですから……。
主人公にいたっては、あんなフリーな武士おかしいって!
時代小説と言えば、現代にはない情や理やしがらみに縛られながらも、生きている人間の中身は変わらない故の悲しみや愛おしさを楽しむものだと考える私には、違和感以外の言葉が出てきません。

時代小説でも樋口作品色がまったく消えないというのは凄いことでしょう。
ですが、私の想像する「時代小説」「捕物帳」とは相容れなかったかと。
| [国内作家:は行]樋口有介 | 21:52 | comments(0) | - |
夢の終わりとそのつづき/樋口有介
刑事を辞めて八ヶ月。
雑誌への寄稿で食いつないでいた俺・柚木草平を、絶世の美女が訪ねてきた。
ある男を一週間尾行するだけの簡単な仕事に、二百万円もの報酬。
買い食いしながら一日歩き回るのを尾けていたところが、三日目に男は謎の餓死。
死の直前まで、飲み食いしていたはずなのに――。
アクロバティックな展開と会話の味が秀逸な、柚木草平“三十五歳”の事件。
初文庫化。


ある事情で警察を辞め、妻子とも別居し、名ばかりのフリーライターとなった柚木。
事務所で寝泊りしていた彼の元に絶世の美女が訪ねてきて、ある男を一週間尾行してくれたら前金で100万、成功時にはさらに100万渡すという。
うまい話には罠があるのを承知で請け負った柚木だが、尾行をさぼり人にまかせた3日目に、男は死んでしまう。
しかも死因は餓死。
不審に思った柚木は謎を追うが……というストーリー。

創元推理文庫での再文庫化順にならば、柚木草平シリーズとしては5作目。
そして、もともとは「ろくでなし」というタイトルで立風書房から出版されていたものを、主人公を柚木にして全面改稿したものだそうです。
もともとの主人公は別の中年男だというのですから、これは物凄い「改稿」です。
しかし雰囲気は当時のままだそうで、正直に言えばミステリとしては微妙。
柚木シリーズであることや、彼が警察を辞めた事件がどういうものだったかがわかるのが嬉しくて★3つ表記にしていますが、展開にも謎にもどうしようもないバランスの悪さがあって、読んでいてちょっぴり辛かったです。
| [国内作家:は行]樋口有介 | 16:03 | comments(0) | - |
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