スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶/大崎善生
永遠に私の前から姿を消してしまった洋一のことを、結婚を控えた今、しきりに思い出すのはなぜだろう。
大学時代、決定的な関係を避けて、あやふやに別れた彼との木漏れ日のように暖かな記憶(「ドイツイエロー」)。
孤独な魂が響き合い、その一夜だけを共にした男が私に刻印した広場の響き(「いつか、マヨール広場で」)。
今でも忘れられない追憶の中で、密やかな調べを奏でる四つの恋愛短編。


短編集で
「キャトルセプタンブル」「容認できない海に、やがて君は沈む」「ドイツイエロー」「いつか、マヨール広場で」
の計4編を収録。

短編集「九月の四分の一」と密接にリンクする作品「キャトルセプタンブル」と、ファザコン主人公も(見も蓋もない)「容認できない海に、やがて君は沈む」はまあまあかな、という印象でした。
それが残り二作が好みで印象一変。
特に「ドイツイエロー」が好きでした。
著者の作品では小説家の次に熱帯魚を飼う男が頻出しますので(もちろん合わせ技もあり)またか、と思ったのですが、視点は飼う男ではなく彼と付き合う女性。
これが自分でも想像した以上に新鮮でした。
もともと「熱帯魚を飼う男」というコンセプトが結構好きなせいもありますが、熱帯魚という使い古した小道具が新たな存在に調理されていて、さすが作家さんだなと納得しました。
曖昧な態度で男に接し続け、最後の最後に冷たい言葉を吐いてしまった彼女の心境がよくわかるうえに、ラストも好き。
これだけで買って良かったと思えました。
短編集全体としては絶賛するようなものではないかもしれませんが著者のカラーが出ていて、読みやすい作品でした。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:あ行]大崎善生 | 18:05 | comments(0) | - |
別れの後の静かな午後/大崎善生
それは僕に必要な静かな午後だった。
風も波もない、全く平静な宇宙空間にいるような時間が――恋人との別れから三年後、一本の電話が僕を直撃した。
胸の痛みを抱えながらも、やがて心の奥底が暖かくなる時間が訪れる(表題作)。
別れとはじまり、生きることの希望を描いた珠玉の短編集。


短編集で
「サッポロの光」「球運、北へ」「別れの後の静かな午後」「空っぽのバケツ」「ディスカスの記憶」「悲しまない時計」
の計6編を収録。

安定感のある短編集でした。
著者らしい言い回しや展開や、いえ雰囲気そのものが「らしく」て、安心して読み進めることができました。
コテコテの設定に感じる現実感のなさをギリギリのところで回避していて、ふいに地に足がついたような台詞が入ったりするところがいい。
強く感動した心に残る作品はありませんでしたが、どれも良かったです。
好きなのはパチンコ中毒だった男が過去を思い出す「球運、北へ」、ストレートな夫婦小説の「空っぽのバケツ」、珍しい展開をする「ディスカスの記憶」です。
| [国内作家:あ行]大崎善生 | 17:03 | comments(0) | - |
ロックンロール/大崎善生
小説執筆のためパリのホテルに滞在していた作家・植村は、なかなか筆の進まない作品を前にはがゆい日々を送っていた。
しかし、そこに突然訪れた奇跡が彼の感情を昂ぶらせる。
透き通るような青空の下で、恋が動き出そうとしていた。
ポケットに忍ばせたロックンロールという小さな石ころのように、ただ転がり続ければいい。
作家は突き動かされるように作品に没頭していく――。
欧州の地で展開される切なくも清々しい恋の物語。


熱帯魚専門雑誌の編集者から作家に転身した植村。
彼を見出したのは、業界ではそれなりに名の知れた編集者・高井だ。
二人の恋人の間をピンポン球のように行ったり来たりしていた高井は、しかし3人目の彼女を同じ編集者から得る。
彼女は、植村の処女作が新人賞を獲ったパーティーの席で知り合ったのだった。
その植村は本業となった小説を書くペースが上がらず、パリのホテルで缶詰になって何とか作品を完成させようとしていたのだが、そこへ……というストーリー。

いや、ストーリーと書いておきながら何ですが、この作品に特にストーリーはない気がします。
しかも大崎善生でラブストーリーといえば切ないイメージがすぐに浮かびますが、これは明るい。
パリといったらじめっとした物語を想像しちゃうような気がするんですけどね。
ラテン系だし、最近の異常気象がやってくる前は夏にエアコンがいらなかったらしいですし、案外この小説のようにカラッとしているのかもしれません。

普通に考えたら気持ちが悪い関係でこんがらがっているのに、何故か憎めない人たちのちょっとした恋愛模様、といったところでしょうか。
現実感は薄いです。
あるとしたら、主人公の作家が作品を作り上げていくまでの過程を語っているところでしょう。
きっと著者の経験が反映されているに違いないと、そういう意味で現実味があります。
(作家になるにあたっての設定がまた同じですし)
はっきりと鏑木君を選ぶと断言できる私からすると、「パーティーの余興で上演された恋愛人形劇」というところでした。
| [国内作家:あ行]大崎善生 | 23:10 | comments(0) | - |
ドナウよ、静かに流れよ/大崎善生
ドナウよ、静かに流れよ
ドナウよ、静かに流れよ
大崎 善生

ドナウ川で邦人男女が心中…その小さな新聞記事が頭から離れなくなった私は、二人の足跡を追ってウィーンへと向かった。
もはやこの世にいない19歳の少女、日実は、異国の地でどんな恋をし、何を思い、そして何ゆえに追いつめられていったのか?
悲劇的な愛の軌跡を辿る、哀切さにみちたノンフィクション。


静かで丁寧な語り口で、わずか19歳で自らの命を絶った少女を、彼女が愛した男のことを追いかけているノンフィクション作品です。
構成も、その「事実」へと迫っていく様も、著者のスタンスもすべて美しかったです。
「33歳の男性と19歳の少女の心中」という表面も中身も、決して簡単に「恋だった」「愛だった」と納得できるものではないというのに、こういう風に仕上げてしまえるのはさすがです。

ノンフィクションなだけに、実在の「登場人物」に文句をつけるのははばかれますが、自殺した少女の両親のやり方には疑問が残りました。
さりげなくそういった意見も潜ませているせいかもしれませんが、ルーマニアという国の様子が描写されている辺りで、生意気な少女へ少し同情しました。
| [国内作家:あ行]大崎善生 | 20:57 | comments(0) | - |
孤独か、それに等しいもの/大崎善生
孤独か、それに等しいもの
孤独か、それに等しいもの
大崎 善生

今日一日をかけて、私は何を失ってゆくのだろう―。
高校三年の初秋、ピアスの穴を開けようとする私に、恋人がささやいた一言―大切なものを失くしてしまうよ。
あれから九年を経て、私は決まりきった退屈きわまりない毎日を過ごしていた…(「八月の傾斜」)。
憂鬱にとらえられ、かじかんでしまった女性の心を映しだし、灰色の日常に柔らかな光をそそぎこむ奇跡の小説全五篇。
明日への小さな一歩を後押しする珠玉の作品集。


短編集です。
収録は
「八月の傾斜」「だらだらとこの坂道を下っていこう」「孤独か、それに等しいもの」「シンパシー」「ソウルケージ」
の5編。
著者の作品の主人公といえば「中年男性で雑誌の編集者か作家」という著者自身をうつしだしたものが多く、また?と少しあきれてしまうこともありましたが、ここでは5編中4編の主人公が女性。
「八月の傾斜」を読み出してすぐ、女性であることに驚いてしまいました。
そして新しいと思うと同時に、やっぱりいつもの中年男が主人公の方がしっくりくる気がするのですから、人間とは現金なものです。
それ以外に、ちょっと入り込めない話が多かったような気が。
派手な背景が語られるわりに、軽い。
その軽さが私は好きなのですが、ここではちょっと設定が重くてアンバランスかな、と思う作品が多かったです。
それでも「八月の傾斜」のラストは好きですし、「だらだらとこの坂道を下っていこう」はほっとさせられました。
| [国内作家:あ行]大崎善生 | 22:12 | comments(0) | - |
九月の四分の一/大崎善生
九月の四分の一
九月の四分の一
大崎 善生

逃げるようにして、僕はブリュッセルへ辿り着き、世界一美しい広場で、ひとり悄然としていた。
潰えた夢にただ悲しくてやる瀬なくて。
そこで奈緒と出会った。
互いの孤独を埋めるような数日間を過ごし、二人は恋におちるのだが、奈緒は突然、姿を消した。
曖昧な約束を残して(表題作)。
―出会いと別れ、喪失と再生。追憶の彼方に今も輝くあの頃、そして君。深い余韻が残る四つの青春恋愛短篇。


短編集です。
収録は
「報われざるエリシオのために」「ケンジントンに捧げる花束」「悲しくて翼もなくて」「九月の四分の一」
の4編。
恋愛の醜い部分が見えなくて、軽いという人もいるかもしれませんが、私には好ましい4編でした。
現在進行形の話ではなく、過去を想う形式も好み。
4編全てのタイトルも好きで、著者の選択する言葉一つ一つが好みなのだろうと思います。
| [国内作家:あ行]大崎善生 | 22:04 | comments(0) | - |
パイロットフィッシュ/大崎善生
パイロットフィッシュ
パイロットフィッシュ
大崎 善生

人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない―。
午前二時、アダルト雑誌の編集部に勤める山崎のもとにかかってきた一本の電話。
受話器の向こうから聞こえてきたのは、十九年ぶりに聞く由希子の声だった…。
記憶の湖の底から浮かび上がる彼女との日々、世話になったバーのマスターやかつての上司だった編集長の沢井、同僚らの印象的な姿、言葉。
現在と過去を交錯させながら、出会いと別れのせつなさと、人間が生み出す感情の永遠を、透明感あふれる文体で繊細に綴った、至高のロングセラー青春小説。
吉川英治文学新人賞受賞作。


「人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない」
この冒頭の一文に尽きる感じがする小説です。
青春小説であり、ストレートな恋愛小説として読みました。
さすがに文章が読みやすく、するっと入ってきます。
その分重みはないのですが、不思議な浮遊感でいつまでも心に残りそうな作品でした。
あと、作中の傘の話が好きです。
感心しちゃいました。
| [国内作家:あ行]大崎善生 | 21:58 | comments(0) | - |
聖の青春/大崎善生
聖(さとし)の青春
聖(さとし)の青春
大崎 善生

重い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指す弟子のために、師匠は彼のパンツをも洗った。
弟子の名前は村山聖。
享年29。
将棋界の最高峰A級に在籍したままの逝去だった。
名人への夢半ばで倒れた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルたちとの友情を通して描く感動ノンフィクション。
第13回新潮学芸賞受賞作。


時間が欲しかっただろう、と想像します。
その一方で、ぎりぎりの人生を精一杯歩んだのは、ネフローゼという病を抱えた村山聖という人間でしかなかったとも思います。
病気さえなければ、と安易に考えられない。
ノンフィクションの構成が苦手な私ですが、これは読めました。
| [国内作家:あ行]大崎善生 | 21:49 | comments(0) | - |
| 1/1PAGES |