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群衆の悪魔 デュパン第四の事件/笠井潔
革命前夜のパリ。
対立する軍隊と群衆の間に響いた一発の銃声が、一斉射撃を招いた。
だが若き詩人シャルルは、その銃弾が群衆に紛れて取材中の、ある新聞記者を狙って背後から撃たれたものであることを目撃してしまう。
逃走する黒い影の正体の解明を依頼され、名探偵デュパンは捜査を開始した。
二月革命前後、爛熟の都に蠢く群像を壮大に描いた、巨匠ポオへ捧げる熱いオマージュ。


ブルジョワジー寄りの国王ルイ・フィリップへの労働者の不満が渦巻くパリで、その運動に賛同する詩人シャルルは兵士とにらみ合うデモ隊の中にいた。
そこに一発の銃声が響き、軍からデモ隊は一斉射撃を受ける。
しかし、その発端となった銃弾は、デモ隊側にいたパリの著名な新聞社の記者を、背後から狙ったものだった。
一気に情勢を動かした銃声は、記者個人を狙ったものだったのか。
それなら背後には何があるのか。
それとも……。
唯一人、記者が銃撃され死亡した瞬間を目撃していたシャルルは、その謎を解くために探偵デュパンを頼るが……というストーリーです。

デュパンを探偵として登場させただけでなく、エドガー・アラン・ポオへのオマージュ作品となっている……ようなのですが、この手のものを気にせず読むくせに、元を知らない恥知らずな私には、どこがどう素晴らしいのか理解できませんでした。
その辺りの感想は、是非違う方のものを参考にすると良いと思います。
(私は、参考しようにもサッパリ)

舞台は2月革命のパリです。
2月革命というのは、これまでのヨーロッパにおける市民革命の主体が労働者へと移り社会主義者も関わっていたということで、作中ブランキやマルクスも登場します。
というか、語り手のシャルルはポオ作品を仏訳したことでも知られる詩人ボードレールのことですし、バルザックも登場人物の一人。
こうなってくると、ミステリ部分も当然気にはなるのですが、それ以外の当時の情勢や風俗の描写が面白く、ミステリ論なのでしょうか群衆へのアプローチも興味深く(私の頭では何となくわかる程度ですが)一体何を読んだのか、不思議な読後感でした。
一番頭に残っているのが、公衆衛生話というのがまた。
まぁ、ミステリ読みとしての本筋からどんどん外れていくのは、著者らしいとしか言いようがないので、堪能したことになるのかもしれません。

実はここのところずっと、この作品にかかりきりでした。
なかなか読み進められなかったのは、寝る前に読むと眠くなってしまうということもありましたが、私がここで描かれる歴史的事実をきちんと認識していなかったせい。
あの革命のことか、と世界史の知識を頭の奥底から引っ張り出してからはスムーズでした。
ということで、これから挑戦なされる方は、その辺りを念頭において読み進めるとより面白いのではないかと思います。


上下巻完結。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:か行]笠井潔 | 00:03 | comments(0) | - |
エディプスの市/笠井潔
「ユウが愛しているのはママだけで、ママが愛しているのはユウだけだった」
ドーム都市〈エディプス〉に住む少年は、誰もがみな母親と二人だけで暮らす。
ユウとママもそうだった。
二人は夜になると全裸で抱きあって眠った。
ユウもその生活に満足していたのだがある日少女アイに出逢ってから、ユウの中にママへの憎しみが生まれた――未来社会の性の姿を鋭く描く表題作他18篇を収録。
SFとミステリを横断する鬼才の全短篇。


短編集で
「エディプスの市」「エロティック・ルーレット」「ウェスターマークの惑星」「ニルヴァーナの惑星」「鸚鵡の罠」
「愛の生活」「惑星イルの密室」「地球を救った男」「留守番電話」「避暑地の出来事」「夜の訪問者」「流されて」「黒いオルフェ」「雨のしのび逢い」「地球に落ちてきた男」「培養実験」
「ゴーギャンの絵」「修道僧のいる柱廊」「雑踏のなかのの物神」
の計19編を収録。

笠井潔という矢吹駆シリーズしか頭に浮かばない状態から抜け出そうと、読みやすそうな短編集を手にとってみました。
全体的に暗い、ディストピア物っていうのでしょうか、そこからの救いとかSF的なドラマティックなものではなく、アイデアありきの印象のものも。
面白かった!と思えるものと、そうでも……というものの差が、アイデアが気に入ったかどうかによっている気がします。
また未来が舞台であっても、現代の問題を反映させたものが多いです。
現代の延長に未来があるのですから当然といえば当然かもしれませんが。

表題作の「エディプスの市」はタイトル通り近親相姦(母子相姦)がテーマで、ちょっと衝撃的です。
小話でクスリとしたのは「地球を救った男」でしょうか。
でもシリーズ化しても良いと思ったのは「ウェスターマークの惑星」です。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:か行]笠井潔 | 14:02 | comments(0) | - |
魔/笠井潔
評価:
笠井 潔
文藝春秋
¥ 680
(2007-02)
ストーカー被害に悩む女子学生、父を亡くし、拒食症を再発した女性の謎の失踪事件……。
サイコセラピスト・鷺沼晶子の依頼を受けた私立探偵・飛鳥井が、現代社会を揺るがす“魔”に挑む。
社会病理を鮮やかに描き、驚愕の謎解きをも達成した傑作ミステリー。
単行本に付されたスペシャル・エッセイを収録。


短編集で
「追跡の魔」「痩身の魔」
と、スペシャルエッセイの「私立探偵と本格探偵小説」
を収録。

私立探偵・飛鳥井シリーズ第3弾。
私はこの作品から読みましたが、特に問題なく読めました。

和製ハードボイルドを目指した(あるいは収録されたエッセイや解説によれば逆にハードボイルド作品を皮肉って)作られたシリーズだそうです。
ですが、私はハードボイルドというよりは普通に本格ミステリとして読みました。
中編が2作収録されていますが、私は1作目の「追跡の魔」の謎解きにこなれた「らしさ」を感じました。

「追跡の魔」はストーカーを、「痩身の魔」は拒食症を扱っており、このシリーズはそういった現代の病変、“魔”をテーマにしているようですが、それがうまくかみ合っている気がしました。
現代の病や社会問題を扱うとなると、説教臭さや無理矢理事件にした感じを受けて違和感があるものですが、そこのあたりは非常にスマート。
非常に冷静に、そして安心して読める作品です。
| [国内作家:か行]笠井潔 | 21:50 | comments(0) | - |
薔薇の女―ベランジュ家殺人事件/笠井潔
火曜日の深更、独り暮らしの娘を絞殺し屍体の一部を持ち去る。
現場には赤い薔薇と血の署名――映画女優を夢みるシルヴィーを皮切りに、連続切断魔の蛮行がパリ市街を席捲する。
酷似した犯行状況にひきかえ、被害者間に接点を見出しかねて行き詰まる捜査当局。
事件のキーワードを提示する矢吹駆の現象学的推理が冴える、シリーズ第三弾。


矢吹駆シリーズ第3弾。

パリは、火曜日の夜に連続して起きる殺人事件に怯えていた。
被害者に共通するのは、若い女性であること、自室で絞殺され屍体の一部が持ち去られているが性的暴行の跡がないこと、全裸の死体の上に赤い薔薇がばら撒かれ<アンドロギュヌス>という血の署名が残されていること……。
そして持ち去られた部位が、頭部、両腕、両脚、とそれぞれ異なることからマスコミは、犯人が人肉人形を作ろうとしていると騒ぎ立てて、担当となったモガールは手がかりを掴めずにいた。
一方、ラルース家とロシュフォール家の事件の背後にいたと思われるニコライ・イリイチなる男を探していた駆は、事件にドミニク・フランスという戦前の女優の存在が絡んでいることを指摘するが……というストーリー。

ミステリ小説として、前作より格が下がったという意見はよく聞きますし私も筋そのものに納得が出来ない部分もあるのですが、そのせいか読みやすい作品となっています。
また、本格ミステリ小説の形式で行われる主人公・駆と思想家の対決は、今回はバタイユ(一作も読んだことがないにも関わらず、「全共闘時代に好まれた思想家」という印象が拭えない)です。
そのあたりも読みやすいので、これ一作では満足できないかもしれませんがシリーズ作品としては楽しめると思います。
| [国内作家:か行]笠井潔 | 14:02 | comments(0) | - |
サマー・アポカリプス/笠井潔
サマー・アポカリプス
サマー・アポカリプス
笠井 潔

灼熱の太陽に疲弊したパリで見えざる敵に狙撃されたカケルを気遣い、南仏へ同行したナディアは、友人の一家を襲う事件を目の当たりにする。
中世異端カタリ派の聖地を舞台に、ヨハネ黙示録を主題とする殺人が四度繰り返れ…。
二度殺された屍体、見立て、古城の密室、秘宝伝説等、こたえられない意匠に溢れる、矢吹駆シリーズ第二弾。


第1弾「バイバイ、エンジェル」に続き、思想的問題への提言を物語を通して行うという形式は当然残っているのですが、よりミステリ小説として面白いのがこの第2作目です。
これでもかというぐらいに散りばめられた小道具の数々には嬉しいばかり。
濃厚な本格ミステリを求めるならば、この一冊です。

余談ですが、冒頭のパリでの猛暑描写を後の実際のヨーロッパ異常気象の時に思い出しました。
今現在もパリでエアコンのついた部屋は稀なようです。
| [国内作家:か行]笠井潔 | 16:03 | comments(0) | - |
バイバイ、エンジェル/笠井潔
バイバイ、エンジェル
バイバイ、エンジェル
笠井 潔

アパルトマンの一室で、外出用の服を身に着け、血の池の中央にうつぶせに横たわっていた女の死体には、あるべき場所に首がなかった!
ラルース家を巡り連続して起こる殺人事件。
警視モガールの娘ナディアは、現象学を駆使する奇妙な日本人矢吹駆とともに事件の謎を追う。
日本の推理文壇に新しい一頁を書き加えた笠井潔のデビュー長編。


濃厚な一冊。
本格ミステリとしてもしっかり読ませてくれますし、思想的・哲学的な問題が殺人事件を扱う小説として提示されているという形式も凄い。
最初に読んだ時には、ある種の高揚感を憶えました。
が、物語の構成はあまり好みではありません。
そのあたりの微妙さはデビュー作らしいといえばそうなのかもしれません。
あと、舞台がフランスというだけでなく文体が翻訳小説っぽいので、苦手な人はまずついていくのが辛いかもしれません。
かく言う私も翻訳小説苦手なのですが、物語にのめりこめてしまった後は気になりませんでした。
それに探偵・矢吹駆も結構愛着が持てるキャラクタですし、語り手のナディアが可愛い!
シリーズを続けて読もうという気になるかどうかはキャラクタによるところの多い私ですから、これは嬉しい限りでした。
何にしろミステリ好きな人は読んで損はないと思います。
| [国内作家:か行]笠井潔 | 15:52 | comments(0) | - |
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