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ボーナス・トラック/越谷オサム
草野哲也は、雨降る深夜の仕事からの帰り道、轢き逃げ事故を目撃する。
雨にさらされ、濡れた服のまま警察からの事情聴取を受けた草野は、風邪をひき熱まで出てきた。
事故で死んだ青年の姿が見えるなんて、かなりの重症だ……。
幽霊との凸凹コンビで、ひき逃げ犯を追う主人公の姿を、ユーモアたっぷりの筆致で描く、第16回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞の著者デビュー作。


大手ハンバーガー・チェーンに就職した草野は、職場からの帰り道でひき逃げに遭遇する。
撥ねられた青年を前にパニックになった草野が、何とか警察を呼ぶことが出来たものの、雨に打たれて翌日には高熱が。
しかも、撥ねられて死亡したはずの青年の姿が見えるのだ。
熱のせいの幻覚と信じて疑わなかった草野だったが、アルバイトの南までもが彼の姿が見えていることがわかる。
幽霊と意気投合した草野は、彼を成仏(?)させるために、ひき逃げ犯を探すことになるが……というストーリーです。

ミステリの要素がある物語に、幽霊だと超能力だのを混ぜるのは、今までも多くあったかと思います。
この小説と同じような、幽霊が自分を殺した犯人を捜すものも読んだことがあります。
ですが、何か、それだけで説明してしまうには惜しいような物語でした。
ミステリとしての出来が良いというわけでもなく、展開が唸らされる程にうまいわけでもなく、コメディに徹しているわけでもなく、こう、うまく説明出来ないのですが……。
「どことは言えないけれど、凄く良い人だよ」
と、恋人候補になりそうな誰かを誰かに紹介している気分です。
適当なこと言いやがって、と思われるかそれとも、何となく良いのね、と感じ取ってもらえるかは私の信用度にかかっている状況ですな。

ポイントはファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した作品であること、でしょうか。
創元推理文庫の作品ですし、犯人探しも重要な筋ではあるのですが、それだけではない雰囲気を持っています。
憎きひき逃げ犯をどうにかして追い詰めたいという悲壮感が、主人公二人にはありません。
もちろん、ひき殺された青年・横井には悔しさもあります。
草野もどうにかして捕まえてやりたいと思っているます。
しかし、新米社会人となって生活に疲れ果てている草野の生活が幽霊に取り付かれて好転していく様子や、幽霊となったことで今までに平凡だった人生の幸せを感じ取る横井の、成長物語の側面を大きく感じました。
主人公二人だけでなく、幼い頃から幽霊が見えて嫌な思いばかりしていた南も。
そのための要素として幽霊たちが描かれていて、ほのぼのなだけではない辛い事件もあり、それがファンタジックに昇華される様は、思わず「こんなことがあってくれ」と思わせてくれるものでした。

構成を含め色々甘い部分もありましたし、やはりミステリの視点でしか作品を評価できない私の固い頭のせいもあってか気に入らない点もありましたが(ご都合過ぎる)、素直に読める作品だったと思います。
タイトルは特に好きですね。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:か行]越谷オサム | 23:01 | comments(0) | - |
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