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カンビュセス王の秘宝/ポール・サスマン、篠原慎訳
評価:
ポール サスマン
角川書店
---
(2003-02)
紀元前五二三年。
古代エジプトをほぼ征圧したペルシア王カンビュセスは、最後の征討軍をテーベに送った。
だが、その巨大な軍隊の足跡は、突然途絶えてしまう。
強烈な砂嵐に巻き込まれ、消滅したと歴史では伝えられているが、その謎は、今もまだ解き明かされていない――。
現代。
タラは考古学者の父の招きで、エジプトを訪れる。
しかし、空港にも自宅にも父の姿はない。
発掘現場の別宅でタラが発見したのは、すでに死んでいる父の姿だった。
そして、部屋に残されていたのは、父が嫌っていた葉巻の匂いだけ……。
壮大な砂漠を舞台に、エジプト史上最大の謎解きが幕を開ける。


動物園の爬虫類棟で働くタラ・マルレーは著名な考古学者であるが疎遠になって久しい父からエジプトに遊びに来ないかと誘われる。
一体どういう心境の変化かと疑うタラは、しかしカイロまで行き、死体となった父を発見することとなる。
父親が心臓発作で死んでいた部屋には、彼が周囲のものに決して喫煙を許さなかった葉巻の香りが……。
一方ハリファ警部は、新たな殺害事件を調査していた。
何か金属製のもので殺害された無残な死体は、古代遺物の違法売買に関わっていたことがわかる。
そこからハリファ警部はサイフ・アッラーというテロ集団に辿り着き、父に代わって家族を養った兄・アリのことを思い出すが……というストーリー。

ハリファ警部をメインに置いたシリーズとして考えるならば1作目にあたります。
私は2作目「聖教会最古の秘宝」から読んだのですが、特にシリーズ作品らしいところはないので単体で読めます。

タイトルにある「カンビュセス王」とは紀元前のペルシア王です。
世界史に疎い私には初耳な方ですが、作中によれば「この王がエジプト制圧に5万人もの軍隊を派兵したものの砂嵐で一瞬によって砂に埋まった」という伝説があり、それを発見することができれば「ツタンカーメン王の発見よりも偉大な」ことになるそうです。
この5万人の軍隊の亡骸=秘宝が物語にどう絡んでくるかは作品を読んでいただくとして、構成はわかりやすいものでした。
この手の歴史ミステリサスペンス作品にありがちなものをぎゅっとつめてあって、読み慣れた方には馴染みがあるのではないかと思います。
面白かったのは後半がメロドラマ化すること。
パニック映画やサスペンス映画だと思ったら、この展開はメロドラマじゃん!ということはよくあると(個人的には)思うのですが、まるっきしそのノリでした。
もっとカラッと仕上げた方が良いと思うのですけどね……。
その点も含め、ハリファ警部については、2作目から読んだおかげで彼の過去を垣間見れる面白さがありましたが、もう一人の主役タラについてはあんまり感情移入できず。
酷い目に遭い続ける彼女に同情することができればもっと良い評価ができるのではないかと思います。
これは好き嫌いでしょう。
訳に癖があるかとも感じましたが、全体的には安心して読めるレベルでした。

上下巻完結。
カンビュセス王の秘宝〈下〉 (角川文庫)
カンビュセス王の秘宝〈下〉 (角川文庫)
ポール サスマン
アマゾンで新品は品切れと読めないことを覚悟したのですが、近所の本屋であっさり発見。拍子抜け。


JUGEMテーマ:読書
| [海外作家:P〜T]ポール・サスマン | 16:34 | comments(0) | - |
聖教会最古の秘宝/ポール・サスマン、黒原敏行訳
評価:
ポール サスマン
角川書店
¥ 740
(2006-04)
エジプトの遺跡で老ホテル経営者が変死体となって発見された。
単純な事故死かと思われたが、15年前のユダヤ人旅行者殺人事件とこの老人の関わりに気付いたルクソール警察ハリファ警部は、エルサレム警察と共同で過去の事件を洗い直すことにする。
同じ頃、パレスチナ人ジャーナリストのレイラは、特大スクープをほのめかす匿名の手紙を受け取っていた。
そこには、暗号めいた古文書のコピーが同封されていた……。


エジプトの遺跡で老人の死体が発見され、被害者の足が合指症であったことからかつてハリファが担当した15年前のユダヤ人殺人事件とのつながりが出てくる。
それは疑われた男が自殺して決着した後味の悪い冤罪事件だった。
上司に逆らい捜査をすすめようとするハリファだったが……。
一方、イスラエル叩きをするパレスチナ人ジャーナリストのレイラのもとには暗号がスクープを暗示する文章と共に送られてきていた。
最初は悪戯だと思ったレイラだったが……というストーリー。

ハリファ警部を主役にしたシリーズだとすれば2作目です。
しかし特に問題なく読めました。

冒頭の過去部分ですぐにわかるのですが、タイトルにある「秘宝」とはユダヤ教の象徴でもあるメノラーです。
それを巡って、舞台はエジプト・パレスチナ・イスラエル、果ては……と語り手が変わりながら移動しあい、関わってくるものもパレスチナとイスラエルの宗教摩擦だけでなくナチスまで、という作品でした。
メノラーに関しては某漫画で読んだことがあったので「あああれか」とすぐに想像出来ましたが、作中説明もありますし、この手の歴史サスペンスでよく取り立たされる聖杯や聖骸布や聖遺物なんかと同じイメージでいけます。
(ユダヤ教徒の皆さんに怒られそうな解説ですが)
つまりはよくあるお話……と言いたいところなのですが、面白かったというか感心したのは中東問題を真正面から扱っている点です。
どうしても欧米人だとイスラエル寄りになりがちだと想像するわけですが、この作品ではそのあたりの扱いが上手い。
偏っていないのです。
それはムスリムのハリファ、パレスチナ人のレイラ、そしてイスラエル人のアリエーという三人の主役格の人物を描いていることからも言えますし、引っかかることがほとんどなかったです。
単純に対立する立場であるレイラとアリエーも、それぞれ悲惨な過去があり、気持ちがわかる。
それだけにラストの余韻には素直に感じ入りました。
これは日本人には書けないタイプの小説ではないかと思います。
肝心の秘宝を巡るストーリーもうまく作ってあって、最後まで楽しく読み終えることが出来ました。

上下巻完結。
聖教会最古の秘宝〈下〉 (角川文庫)
聖教会最古の秘宝〈下〉 (角川文庫)
ポール サスマン


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| [海外作家:P〜T]ポール・サスマン | 00:11 | comments(0) | - |
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