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乱鴉の島/有栖川有栖
評価:
有栖川 有栖
新潮社
¥ 700
(2010-01-28)

犯罪心理学者の火村英生は、友人の有栖川有栖と旅に出て、手違いで目的地と違う島に送られる。
人気もなく、無数の鴉が舞い飛ぶ暗鬱なその島に隠棲する、高名な老詩人。
彼の別荘に集まりくる謎めいた人々。
島を覆う死の気配。
不可思議な連続殺人。
孤島という異界に潜む恐るべき「魔」に、火村の精緻なロジックとアクロバティックな推理が迫る。
本格ミステリの醍醐味溢れる力作長編。


作家アリスシリーズ第16弾。

犯罪心理学者の火村は下宿の大家からすすめられ、友人で作家の有栖川とある島へ旅行に出る。
しかし勘違いから別の、鴉島と呼ばれるほぼ無人島へとたどりつき、たまたまそこで集まっていた人々のやっかいになることに。
高名な老詩人を囲む会だと説明されるも、どこか排他的な面々。
そこに世間をにぎわせているカリスマ経営者が現れ、集まる人たちにある目的があるのだと有栖に吹き込む。
そこで殺人事件が起き……というストーリーです。

久しぶりに著者の作品を読んだのですが……凄く拍子抜けでした。
せっかくの孤島モノで、鴉が舞う無人島に集まる怪しげな人々と雰囲気ばっちりなのに、肝心の事件が妙にこじんまりしています。
作品自体のバランスが悪い気がしてなりません。
それに大きく関連しているのが、多く扱われている時事ネタ。
かなり違和感があります。
文庫版あとがきには
『世の中の動きの速いこと。しかしだからといってこの作品が陳腐化したとは思わない』
とあります。
それはそうなのでしょうが、そもそもネタが風化したかどうかより、そのネタを盛り込むことが必要だったのか?という点が納得できません。
……いえ、はっきり言うと、ホリエモンこと堀江元ライブドア社長を原型としたキャラクタ・初芝真路の存在そのものが納得できません。
彼の役回りをもっと綺麗にもともと屋敷にいた人物(初芝は途中登場します)に課すことも可能だったはずです。
もちろん多少の動機の修正は必要でしょうが、この作品での真相たる動機に、そこまで気を使う必要があるとは思えません。

自分が期待しすぎたのかな、とも思いますが、キャラクタに愛着のあるシリーズ作という点を加えても、なかなかに読後感は良くない作品でした。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:あ行]有栖川有栖 | 23:36 | comments(0) | - |
英国庭園の謎/有栖川有栖
評価:
有栖川 有栖
講談社
¥ 600
(2000-06)
資産家の人知れぬ楽しみが、取り返しのつかない悲劇を招く表題作。
日本中に大パニックを起こそうとする“怪物”「ジャバウォッキー」。
巧妙に偽造された遺書の、アッと驚く唯一の瑕疵を描いた「完璧な遺書」――おなじみ有栖川・火村の絶妙コンビが活躍する傑作ミステリ全六篇。
待望の国名シリーズ第4弾。


作家アリスシリーズ第7弾にして、「国名シリーズ」第4作目。

短編集で
「雨天決行」「竜肝紅一の疑惑」「三つの日付」「完璧な遺書」「ジャバウォキー」「英国庭園の謎」
の計6編を収録。

再読です。
突如として始まった個人的有栖川再読ブームはこれにて終了。
他に読むものが手元にないせいです。
(国名シリーズではない長編「海のある奈良に死す」「朱色の研究」は読み直したくて仕方がないのですが、だからといって実家に帰るわけにも行かず…)

国名シリーズの評価が全体的に低い私ですが、この短編集はお気に入りです、
「雨天決行」は何気ないことなのですが、思いつかなくて、やられた!と思いました。
(という印象が非常に強かったので再読では珍しく完全に憶えておりました)
また、珍しくアリスが無茶をすることになる「ジャバウォッキー」は雰囲気が好きですし、表題作の「英国庭園の謎」は珍しく表題作に選ばれるにふさわしい存在感があると思います。
(国名シリーズなので、国名が入った作品が出来不出来に関係なく表題作となるので)
そして一番好きなのが「竜肝紅一の疑惑」
初めて読んだ時は印象に残らなかったのですが、年月が私の趣味を変化させたのか、このノリがオチが大好きです。
| [国内作家:あ行]有栖川有栖 | 01:46 | comments(0) | - |
ブラジル蝶の謎/有栖川有栖
美しい異国の蝶が天井を埋めた部屋で殺害されていた男。
何のために蝶の標本が天井に移されたのか。鮮烈なイメージの表題作ほか、小指ほどの小さな鍵の本当の用途が秘書殺しの謎を解く『鍵』など、おなじみ有栖川・火村コンビの名推理が冴えわたる傑作ミステリー全六篇。
読者待望の「国名シリーズ」第三弾。


作家アリスシリーズ第6弾にして、「国名シリーズ」第3作目。

短編集で
「ブラジル蝶の謎」「妄想日記」「彼女か彼か」「鍵」「人喰いの滝」「蝶々がはばたく」
の計6編を収録。

再読です。
作家アリスシリーズの短編集としては2作目ですが、収録の「人喰いの滝」はシリーズとして初めて書かれた短編だそうです。
あとがきにあった通り、私も作中の「去年のクリスマスの事件」に?となったクチですが、「去年の事件」=「46番目の密室」(シリーズ第1弾)で時系列を表現しているとか。
短編というよりやや長めのこの作品は、そのせいか、完成度は高くありません。
しかしトリックは楽しみました。
昔はトリックの奇天烈さよりキャラクタと展開で著者の作品を楽しんでいると思っていたのですが、再読していると実はアイデアの面白さの方が勝っている気がしてきました。
本格作家さんだったんですね…(失礼)
他作品も同じような印象です。
続けて読むと疲れてきました。
| [国内作家:あ行]有栖川有栖 | 01:14 | comments(0) | - |
スウェーデン館の謎/有栖川有栖
評価:
有栖川 有栖
講談社
¥ 650
(1998-05)
取材で雪深い裏磐梯を訪れたミステリ作家・有栖川有栖はスウェーデン館と地元の人が呼ぶログハウスに招かれ、そこで深い悲しみに包まれた殺人事件に遭遇する。
臨床犯罪学者・火村英生に応援を頼み、絶妙コンビが美人画家姉妹に訪れたおぞましい惨劇の謎に挑む。
大好評国名シリーズ第2弾!
長編ミステリ。


作家アリスシリーズ第5弾にして、「国名シリーズ」第2作目。

ペンションを舞台にしたミステリを書こうと取材に磐梯山を訪ねたアリスは、偶然出会った主人の妻の出身地にかけてスウェーデン館と呼ばれる屋敷に招かれる。
直後に起こる殺人事件。
雪に残っているはずの足跡がなく、煙突が折られた屋敷の離れで一体何が起きたのか?……というストーリーです。

再読です。
国名シリーズとしては2作目で、最初の長編になります。
(他長編は「マレー鉄道の謎」があります)
展開が見えるだけに犯人もバレバレなのですが、私は最後の最後に経験と勘で犯人当てをするタイプなので、トリックには感心しました。
雪に残るはずの足跡はどこへ消えたのか、という古典的な謎にうまく答えていると思いますし、ストーリーや雰囲気とよく噛みあった解答であると思います。
長編にしなくても書けるのでは?という部分があるのですが……まあこれは物語の余韻を重視するか否かの趣味の問題でしょう。
私なら大地少年をもっとおどろおどろしく描きたいところです。

宮部さんの解説が好きでした。
| [国内作家:あ行]有栖川有栖 | 10:45 | comments(0) | - |
ロシア紅茶の謎/有栖川有栖
作詞家が中毒死。彼の紅茶から青酸カリが検出された。
どうしてカップに毒が?
表題作「ロシア紅茶の謎」を含む粒ぞろいの本格ミステリ6篇。
エラリー・クイーンのひそみに倣った「国名シリーズ」第一作品集。
奇怪な暗号、消えた殺人犯人に犯罪臨床学者・火村英生とミステリ作家・有栖川有栖の絶妙コンビが挑む。


作家アリスシリーズ第3弾にして、「国名シリーズ」第1弾。

短編集で
「動物園の暗号」「屋根裏の散歩者」「赤い稲妻」「ルーンの導き」「ロシア紅茶の謎」「八角形の罠」
の計6編を収録。

再読です。
冒頭の「動物園の暗号」という暗号モノが苦手で、読みかけてはやめ、やめては手に取りとしてしまいました。
論理やトリック云々より文章や構成が最近のものと比べると下手なせいで読みにくいと感じたのかもしれません。
短編集として、そう魅力がある方だとは思えず。
また、エラリー・クイーンに思い入れが一切ないせいで「国名シリーズ」と言われても興味がわかないせいかもしれません。
その中でもトリックとして面白かったのは「赤い稲妻」です。
マンションの7階から墜落死した女性は、その被害者が誰かと揉みあっているところを目撃したという証言により他殺が疑われるが、部屋にはチェーンがかかっていた。
第一容疑者である部屋を女性に買い与えた愛人は、同じ日のほぼ同じ時間に妻を列車事故で亡くしてた……というもの。
様々なパターンを考えましたが、熟慮する暇を与えない短編という形式によくあっていると思いました。
| [国内作家:あ行]有栖川有栖 | 15:58 | comments(0) | - |
白い兎が逃げる/有栖川有栖
評価:
有栖川 有栖
光文社
¥ 680
(2007-01-11)
ストーカー行為に悩む劇団の看板女優・清水怜奈。
彼女を変質者から引き離す計画は成功したはずだった。
ところが、ストーカーがうざぎ小屋の裏で死体となって発見される。
追いかけていたはずの彼が――。
鉄道に絡むトリックを用いた表題作ほか、火村とアリスが挑む3つの事件。
ミステリのエッセンスをふんだんに盛り込んだ、これぞ正統派の推理小説。


作家アリスシリーズ第14弾にして、短編集では8作目。

中編集で
「不在の証明」「地下室の処刑」「比類なき神々しいような瞬間」「白い兎が逃げる」
の計4編を収録。

再読です。
文庫本としては最新刊となります。

短編集ではなく中編集であると著者が述べているので倣いました。
このシリーズは語り手がアリスの一人称なのが基本なのですが、この作品では視点がかわって、それも効果となって面白かったです。
一番好きだったのは「比類なき神々しいような瞬間」
アリスがクイーンのダイイング・メッセージについてぐだぐだ言うシーンが冒頭にあり、その後の事件でも図入りで紹介されるので一体どう調理されるのかと思いきや、最後にあっと言わされました。
「そう来るか!」と脱力脱帽。
さすがです。
他作品では「不在の証明」はトリックから展開まで予想通りでややがっかり。
シチュエーションは大好きですが、言う程切れ味はない気がするのは「地下室の処刑」、鉄道トリックが面白く調理されている表題作というところが感想です。
| [国内作家:あ行]有栖川有栖 | 19:07 | comments(0) | - |
暗い宿/有栖川有栖
評価:
有栖川 有栖
角川書店
¥ 580
(2003-10)
犯人当てゲーム<トロピカル・ミステリー・ナイト>に参加するため、南の島のリゾートホテルを訪れた臨床犯罪学者・火村英生と推理作家・有栖川有栖。
ハイビスカスに彩られたロビー。
人魚姫のようにさざめく女たち。
抜けるように青い空と青い海。バカンス気分で、のんびり過ごしていた二人だったが、訳ありげな夫婦に出会って…(「ホテル・ラフレシア」)。
廃業した民宿、冬の温泉旅館、都心の瀟洒な名門ホテル――。
様々な<宿>で起こる難事件に火村&有栖川コンビが挑む。
傑作ミステリ作品集。


作家アリスシリーズ第10弾にして、短編集では5作目。
シリーズ内としては“<宿>シリーズ”第1作目。

短編集で
「暗い宿」「ホテル・ラフレシア」「異形の客」「201号室の厄災」
の計4編を収録。

再読です。
まったく順番通りに作品が発見できないのでこんなものを読んでしまいました。
感想の冒頭で余談ですが、装丁が好きです。

その後続かなかったらしい“<宿>シリーズ”というだけあって、すべての作品の舞台は宿です。
それぞれ紹介しますと、取り壊しの途中で古い人骨が見つかる表題作「暗い宿」は廃業した民宿、ミステリツアーのモニターとなったアリスたちが石垣島に滞在する「ホテル・ラフレシア」はリゾートホテル、サングラスとマスクに包帯という姿の客によって起きる事件を描いた「異形の客」が温泉宿、「201号室の厄災」では高級ホテルが舞台と、宿は宿でも様々。
また様々なのは宿だけでなく、既読作品では一番好きかもしれない「ジュリエットの悲鳴」の中に収められていた作品群に似ていたような気がする(記述が曖昧なのは「ジュリエットの悲鳴」が手元にないせいです)単純な謎解きではなく主人公達が傍観者のような「ホテル・ラフレシア」や、火村の視点で描かれアリスがほとんど登場しない「201号室の厄災」と雰囲気も様々。
“手を変え品を変え”攻められたようにどれも短編らしい魅力に溢れていて、面白かったです。
| [国内作家:あ行]有栖川有栖 | 17:46 | comments(0) | - |
ダリの繭/有栖川有栖
幻想を愛し、奇行で知られたシュールレリアリスムの巨人――サルバドール・ダリ。
宝飾デザインも手掛けた、この天才の心酔者で知られる宝石チェーン社長が神戸の別邸で殺された。
現代の繭とも言うべきフロートカプセルの中で発見されたその死体は、彼のトレードマークであったダリ髭がない。
そして他にも多くの不可解な点が……!?
事件解決に立ち上った推理作家・有栖川有栖と犯罪社会学者・火村英生が難解なダイイングメッセージに挑む!
ミステリー界の旗手が綴る究極のパズラー。


作家アリスシリーズ第2弾。

サルバドール・ダリに心酔し、ダリのトレードマークである髭まで真似ていることでも有名な宝石チェーンのワンマン社長が殺された。
フロートカプセルという水中に浮かび瞑想する装置の中で、それも髭が剃られて発見される。
アリスは捜査に加わることとなった火村と共に事件に関わるが……というストーリー。

再読です。
犯人も状況も憶えていたのですが、それでも楽しめました。
細部の記憶が曖昧なのはもちろんのこと、二転三転する展開ににやにやしてしまいました。
浮かんでは消えていく容疑者と不可思議な事態に「なんてこった」「こりゃ駄目だ。わけが判んねぇぞ、畜生」と発言する探偵は見物です。
その後の展開は結構予想できるものかと思いますが、本格モノとして読者にフェアにしようとするせいでしょう。
トリックは派手ではありませんが、納得できるかと。
また、前作「46番目の密室」とはかなり雰囲気が異なります。
前回は別荘という閉じた舞台で、しかもその舞台を説明し切った後に事件が発生するタイプのものでしたが、今回は事件が起きた後で呼び出されるというスピード展開なので話が早い。
加えて被害者の経営していたジュエリー店の人間関係をわかりやすく説明するために、アリス以外の人物の視点があるのも違いでしょう。
(そこに違和感もおぼえましたが。特にラスト)
相変わらず探偵役の火村と助手で語り手のアリスのかけあいが楽しかったです。
シリーズものらしく謎の多い火村の過去や考えについても徐々に明らかになっていくのも良いですね。
しかし火村先生は警察に影響力持ち過ぎじゃないでしょうか。

気になったのが死体が発見される「フロートカプセル」
実在するのかどうかもよくわからない(名前が異なるが同じようなものがある?)それに、水に対する恐怖心が消えない私は入りたいとはカケラも思わないのですが、鬼才ダリの人生と同じように印象的に使われていると思います。
| [国内作家:あ行]有栖川有栖 | 03:58 | comments(0) | - |
46番目の密室/有栖川有栖
評価:
有栖川 有栖
講談社
¥ 620
(1995-03)
45の密室トリックを発表した推理小説の大家、真壁聖一が殺された。
密室と化した地下の書庫の暖炉に上半身を突っ込むという悲惨な姿であった。
彼は自分の考えた46番目の密室トリックで殺されたのか?
推理作家・有栖川有栖とその友人で犯罪学者・火村英生のコンビが怪事件の謎に迫る!
新本格推理小説。


作家アリスシリーズ第1弾。

推理小説家のアリスは、友人で“臨床”犯罪学者の火村と共に密室もの本格推理小説の大家・真壁聖一の別荘に招かれる。
他同業者や真壁を担当する編集者たちを招いた恒例のクリスマスパーティーだ。
しかし不審な男が目撃されたり、真壁が密室ものの卒業を宣言したり、新たな人間関係が発覚したりとどことなく剣呑な雰囲気が漂うなか、廊下中に石灰が撒かれたり部屋にトイレットペーペーが散らかされたり人形が置かれていたり…といった悪戯が起こる。
誰の仕業なのか悩む一行だったが、その夜殺人事件が……というストーリー。

再読です。
学生アリスシリーズを読んでいたら懐かしくなってしまい引っ張り出してしまいました。
(問題は「海のある奈良に死す」からハードカバー版しか購入しておらず手元にないということです。続きが読めない……)

ここで余計な解説をすると、著者には同姓同名の語り手が活躍するシリーズが2種類ありまして、片方が大学生で探偵役が江神、もう片方(この作品もです)が社会人で推理小説家で探偵役が火村となります。
普通の人は「アリスという男の学生時代を描いたシリーズと、成長して作家になった姿を描いたシリーズを同時に書いている」と思いがちですが、どうもパラレルな設定のようです。

さて本編ですが、学生アリスシリーズと比べると軽い、手頃感のある本格モノです。
ネタは密室で、著者のあとがきの通り「犯人特定のプロセスは論理的であるよう心掛けた」作りになっており、終盤の畳み掛けるような謎解きは爽快です。
また、本格モノでありながら読みやすい。
凶器になりそうな分厚い本で難しい話を読むのも楽しいものですが、トリックや設定はきっちりしていながらもさらりと読めるというのは、ある意味で貴重でしょう。
また、このシリーズの面白さは探偵と助手(語り手)の会話と人物造形にある気がします。
度々学生アリスシリーズと比べるのもルール違反のような気もしますが、あちらの探偵役とアリスの関係より一歩踏み込んだ長年の友人という設定があるので、気安いのですね。
トリックや事件に頭を悩ますと同時に、主人公の人間関係のゴタゴタにも付き合うのは辛い時もあります。
こちらには(今のところ)そういうものがありません。
また探偵役の火村の造形が魅力的。
かつて人を殺したいと思ったことのある犯罪学者で、非公式に警察に協力することが認められていて、白いスーツに黒いシャツの男なんて目立って仕方がありません。
特別に奇矯な人物には描かれていませんが、こういうタイプの人間を探偵役に持ってくることは本格モノのセオリーだと言って良いでしょう。
難点を言えば、シリーズ物の第1作であるためにそれらの設定を描写せざるを得ず、問題提起までと解決部分のバランスが悪いかなと思います。
まあ、そのあっさり感も味なのでしょう。
| [国内作家:あ行]有栖川有栖 | 23:59 | comments(0) | - |
双頭の悪魔/有栖川有栖
評価:
有栖川 有栖
東京創元社
¥ 1,092
(1999-04)
他人を寄せつけず奥深い山で芸術家たちが創作に没頭する木更村に迷い込んだまま、マリアが戻ってこない。
救援に向かった英都大学推理研の一行は、大雨のなか木更村への潜入を図る。
江神二郎は接触に成功するが、ほどなく橋が濁流に呑まれて交通が途絶。
川の両側に分断された木更村の江神・マリアと夏森村のアリスたち、双方が殺人事件に巻き込まれ、各々の真相究明が始まる……。


学生アリスシリーズ第3弾。

夏に起きた嘉敷島での事件の傷が癒えなかったマリアは大学を休学し、東京の両親の元からも去り一人旅に出たが、高知の山奥の村で芸術家たちが自給自足をして他者に立ち入らせないという村に留まったまま帰ってこなくなる。
排他的なその村に危機感を覚えたマリアの両親は、英都大学推理小説研究会に面々にマリアを説得してくれないかと頼み、アリスに江神、望月、織田の4人はマリアの滞在する村・木更村に隣する夏森村に宿をとる。
どうしても正式には入村できず、アリスらは不法に入り込もうとし、結果江神のみが接触に成功するが、そこに発生した鉄砲水で木更村は陸の孤島になり、夏森村でも土砂崩れによって交通が困難に。
そして双方で殺人事件が発生し……というストーリー。

再読です。
長いお話なだけあって読み応えがあります。
「読者への挑戦状」が3回もあるのには苦笑させられましたが、著者が目指す本格ミステリとしての様はよく描かれていると思いますし、交通が遮断された2箇所で別々の殺人が発生する状況にはわくわくさせられました。
問題は、第1の殺人が起きるまでが長過ぎること。
上記の私が書いたストーリーに至るまでに200ページも消費されており、さすがに退屈でした。
2ヶ所に別れてそれぞれ犯人探しを読者が楽しめるだけの登場人物数があり、それをフェアに紹介する必要があるにしてもちょっと長い。
分断された2ヶ所で殺人が起こることは作品紹介で知った上で読んでいる人が多いわけで、ええい早く進めよ物語!と思うせっかちな人間にはマイナスでしょう。
また、動機やトリックが長かったわりにあっけなくて拍子抜け。
素人探偵と化した登場人物たちが色々と推理するのはセオリーですが、2ヶ所でそれをされ、結果これでは……。
トリック自体は好きなんですけどね。
登場人物たちが「殺人事件」という異常事態に対して冷静過ぎるのはいつものこと。
本格だから人間が描けてなくて良いとは言いませんが、そのあたりはやはり重要視しません。
だからマリアの独白が不愉快でした。
私がマリアのことが気に入らないということもあるのでしょうが、江神と一緒にいる以上狂言回しの役割だというのに、ぐだぐだ悩まれても困ります。
これは好みの問題でしょうが。

あまり評価しないのね、と問われると「好みが少しずれていた」と答えることになるかと思う第3作目ですが、シリーズ作品としては、謎の人物である江神のことが僅かですが描かれていることで次作を期待させる内容でもあると思います。
| [国内作家:あ行]有栖川有栖 | 17:32 | comments(0) | - |
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