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MM9/山本弘
評価:
山本 弘
東京創元社
¥ 903
(2010-06-24)

地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。
有数の怪獣大国である日本では気象庁内に設置された怪獣対策のスペシャリスト集団“特異生物対策部”略して“気特対”が、昼夜を問わず駆けまわっている。
多種多様な怪獣たちの出現予測に、正体の特定、自衛隊と連携しての作戦行動……。
相次ぐ難局に立ち向かう気特対の活躍を描く本格SF+怪獣小説。


連作短編で
「緊急!怪獣警報発令」「危険!少女逃亡中」「驚異!飛行怪獣襲来」「密着!気特対24時」「出現!黙示録大怪獣」
の計5話からなります。
(普通の長編とも考えられるとは思いましたが、せっかくの連ドラ風なので)

いやぁ、面白かったです。
ウルトラマンやゴジラ、ガメラといった怪獣を真面目にSFにしてある小説でした。
怪獣の存在が当たり前にあって、それに対する国家規模の対策があって、もちろん怪獣への学問的なアプローチもある設定です。
そもそもタイトル『MM9』の“MM”とは“モンスター・マグニチュード”の略で、出現した怪獣の大きさで0から9まで震度のように規模を表し、登場人物たちが所属する“特異生物対策部”が観測して警報として発表するというものですから筋金入り。
巨大怪獣のタイムスケールが人間の世界より遅かったりきちんとしているくせに、自身の体重を支えられないはずなのに……と、科学は通用しない存在と説明されていて、にやにやしてしまいました。
さすが<と学会>会長。
かなりコミカルで、読みやすく、こういうネタがお好きな方は安心して読めるレベルにあると思います。

ただ、いつもいつも著者の作品には既視感がつきまとうんですよね。
どこかで読んだ設定、いつか目にした展開、といった感じで。
そのせいで、面白いんだけど……というひっかかりが読後感にあります。
だからといってクオリティが低いわけではないのが妙なところ。
第1話の「緊急!怪獣警報発令」については、おそらく『海の底』で著者が解説を書かれた際に言及していた「同じネタ」だと思いますが、個人的には、同じネタでも著者が絶賛していた『海の底』よりこの作品の方が完成度が高いと感じました。
また、この作品全体だと、海外ドラマ『プライミーバル』にちょっと似ている部分があると思っちゃいましたが、どちらも面白いですし。
ネタが一緒でもアプローチが違えば、また似ていても面白い方が勝ちだといつもは考えているのに、著者の作品に触れていると他作品がチラつくのが何故なのか、自分でもよく説明できません。
まぁ、これは本当に個人的な感想です。

勢いもあり、ロジックを駆使したSF設定もあり、それに伴う美しいオチもあり(大好きです)満足しました。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:や行]山本弘 | 23:58 | comments(0) | - |
アイの物語/山本弘
評価:
山本 弘
角川グループパブリッシング
¥ 860
(2009-03-25)

人類が衰退し、マシンが君臨する未来。
食糧を盗んで逃げる途中、僕は美しい女性型アンドロイドと出会う。
戦いの末に捕えられた僕に、アイビスと名乗るそのアンドロイドは、ロボットや人工知能を題材にした6つの物語を、毎日読んで聞かせた。
アイビスの真意は何か?
なぜマシンは地球を支配するのか?
彼女が語る7番目の物語に、僕の知らなかった真実は隠されていた――機械とヒトの新たな関係を描く、未来の千夜一夜物語。


「宇宙をぼくの手の上に」「ときめきの仮想空間」「ミラーガール」「ブラックホール・ダイバー」「正義が正義である世界」「詩音が来た日」「アイの物語」
の短編計7編を、人間が衰退した未来を舞台にしたプロローグとエピローグ、それに間に挟まれる8つのインターミッションでつないだ作品です。

私の人間が悪いのか、想像したより感動できませんでした。
絶賛の声を聞いて手に取ったせいで身構えたのかもしれませんが、どのお話も結構安易なアイデアであったり設定だった気がして。
「どこかで読んだ、見た、あの設定に似ている」とついつい考えてしまって、それを上回るパワーを感じませんでした。
読後感はかなり良いです。
よみやすい文章ですし。
しかしハッピーエンド至上主義のくせに、綺麗事だと感じてしまうのが何故か。
再読してもよくわかりません。
性的なものやそれよりもっと暗い欲望を無視している気がするからかもしれませんし、登場人物たちにまったく感情移入できなかったせいかもしれません。

ただ、短編をひとつのテーマで貫いて編集するというのは良いですね。
書き下ろしの2編以外はかなりそれだけだと小粒な印象なのに、一冊を通すと人間の豊かな想像力を信じるポジティブなメッセージが伝わってきました。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:や行]山本弘 | 23:32 | comments(0) | - |
シュレディンガーのチョコパフェ/山本弘
キャラグッズの買い物につきあってくれる裕美子は、俺にとって最高の彼女。
でも、今日のデートはどうにも気分が乗らない。
久々に再会した旧友の科学者、溝呂木がこの世界の破壊を企んでいるらしいのだ──アキバ系恋愛に危機が迫る表題作、SFマガジン読者賞受賞の言語SF「メデューサの呪文」、孤独なサイボーグの見えざる激闘を描く「奥歯のスイッチを入れろ」ほか7篇を収録。
『まだ見ぬ冬の悲しみも』改題文庫化。


短編集で
「シュレディンガーのチョコパフェ」「奥歯のスイッチを入れろ」「バイオシップ・ハンター」「メデューサの呪文」「まだ見ぬ冬の悲しみも」「7パーセントのテンムー」「闇からの衝動」
の計7編を収録。

2006年に刊行された「まだ見ぬ冬の悲しみも」に「七パーセントのテンムー」を加えた短編集です。
物凄く古典的なSF小説ばかりが収録されていたと思います。
ある意味古臭い。
でも安心して読める面もあります。
私はひとつひとつの「濃い」雰囲気が、SFを読んでいるなぁという気分にさせてくれて、満足して読み終わりました。
ひとつのネタをこう引っ張るか、という作品もありましたが、なんというかその引っ張り方がらしいというか……。

好きだったのは地球の宇宙船が襲われる事件を背景に、恐竜型の異星人イ・ムロックと記者との交流を描く「バイオシップ・ハンター」ですね。
イ・ムロックが本当に魅力的で、かつ人類の未来に根本的には明るさが見えるところが良いです。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:や行]山本弘 | 22:43 | comments(0) | - |
神は沈黙せず/山本弘
幼い頃に理不尽な災害で両親を失って以来、家族で信仰していた神に不信感を抱くようになった和久優歌。
やがてフリーライターとして活動を始めた彼女はUFOカルトへ潜入取材中、空からボルトの雨が降るという超常現象に遭遇する。
しかしこれは、「神」の意図をめぐる世界的混乱の序章に過ぎなかった――。
UFO、ボルターガイスト、超能力など超常現象の持つ意味を大胆に検証、圧倒的情報量を誇る一大エンタテインメント。


幼い頃に土砂崩れで両親を亡くした優歌は神の存在に関して疑問を抱くようになる。
長じてフリーライターとなった優歌はオカルト関係の様々な取材の結果疑惑を深めていくが、人工知能研究者となった兄に恐るべき仮説を聞かされる。
それを取材で知り合い付き合いだした若きカリスマ小説家・加古沢黎に漏らしたことから、世界は変質し始めた……というストーリー。

長編SF小説です。
UFOや異星人との接触、超能力やファフロッキーズ(空からの落下物)といったいわゆるオカルト問題のぼう大な検証例と遺伝的アルゴリズムに関しての人工知能や量子コンピュータの問題、現実の科学技術関連のものをまさしくごちゃまぜにした「事実」の羅列が凄まじい作品でした。
面白かったのがオカルトをオカルトだと否定するのではなく検証しようと試みていることと、科学的な事実と小説としての嘘(近未来の小説内設定)を巧妙に交えて世界観を作っていること。
はじめの方にある「2010年にハッブル宇宙望遠鏡の代わりに打ち上げられた新世代の宇宙望遠鏡ウェッブにトラブルが発生」するあたりは、いかにもありそうな架空の話で、解説でも同じように指摘されていましたが、2010年と明記されているにも関わらず「え?そんなことあったっけ?」と思ってしまいました。
そういったことをあちこちでやられて、何がなんだかわからなくなったところに、いわゆる「神」の姿が提示されるわけです。
正直そのアイデアは、よくあるタイプでしょう。
それをうまく見せてくれていて、物凄く楽しみました。

また、私はこれを一種のミステリとして読みました。
神の存在の証明ではなく、ことあるごとに象徴的に語られる「『ヨブ記』においてヨブは何故神に悔い改めるのか」という問題にどう決着がつくのかという観点です。
これに物語として明確な答えが出たので、非常にスッキリしました。

もともと薀蓄ミステリが大好きなぐらいですから、ずらずらと並べられる知識を読むのも苦痛ではありません。
問題点は登場人物がすべて、物語を作るために配置されたキャラクタにしか感じられないということ。
わざとそういう風に書いている(そもそもこの作品自体が主役の優歌が書いたルポだという設定ですから)かもしれませんが、長い物語なので読みにくさを感じる人もいるかもしれません。


上・下巻完結。
神は沈黙せず〈下〉 (角川文庫)
神は沈黙せず〈下〉 (角川文庫)
山本 弘
| [国内作家:や行]山本弘 | 18:23 | comments(0) | - |
闇が落ちる前に、もう一度/山本弘
この宇宙はどうして生まれたのか?
宇宙の果てはどうなっているのか?
“宇宙の本当の姿”を追い求め、ある独創的な理論に到着した宇宙物理学者。
しかしこの理論に従うと、宇宙の寿命はわずか17日間ほどでしかなくなる。
バカバカしいまでの理論の誤りを証明するために、彼は大がかりな実験を始めたのだが……。
表題作のほか4編を収録。
『アイの物語』で“人間の未来”を描き、現代人の心をふるわした山本弘の入門書。


短編集で
「闇が落ちる前に、もう一度」「屋上にいるもの」「時分割の地獄」「夜の顔」「審判の日」
の計5編を収録。

「審判の日」改題です。
中学生以来、久しぶりに山本弘を手に取りましたが、どの作品も面白く読みました。
SF作品として評価の高い「アイの物語」に続くお話ということだったので全てSFかと思いましたが、どちらかというとホラー色が強い短編集です。

表題作の「闇が落ちる前に、もう一度」は本当に短い、計算上宇宙の年齢が実際に観測される天体の年齢より若くなるというおかしな事態を解決するための画期的な理論を考え付いた男の話で、アイデアありきという気もしますが、一番好きです。
他SF作品らしいのはAIを描いた「時分割の地獄」で、「屋上にいるもの」「夜の顔」はホラー。
ある日多くの人々が消えた世界にとり残されてしまった主人公の姿を描く「審判の日」は……SF、でしょうか?

分類するのが難しい感じの短編集でしたが、読みやすさはさすが書きなれている方という感じ。
作品紹介にある通り、著者の入門書としてはなかなか良いのではないかと思います。
(私としては「ソードワールドRPG」の印象が強くて、「このSFがすごい!」で見かけた時には同一著者なのかどうか不安になりましたが)
| [国内作家:や行]山本弘 | 17:33 | comments(0) | - |
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