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鯨の王/藤崎慎吾
評価:
藤崎 慎吾
文藝春秋
¥ 1,040
(2009-12-04)

原子力潜水艦内で乗組員多数が謎の攻撃により変死、アメリカ海軍は海底基地に調査員を派遣する。
一方、新種の鯨を追う学者・須藤もパイロットのホノカとともに同海域に潜航開始した。
軍、企業、テロ組織の思惑が絡み合う深海教千メートルの世界にひそむ脅威とは!?
圧倒的リアリティの傑作海洋冒険小説。


偶然発見された海底に横たわる鯨の骨。
あまりに巨大だったため新種が疑われ、異端の鯨類学者・須藤秀弘は潜水調査艇<しんかい6500>で深海に潜る。
しかし、採取した骨と“龍涎香”と呼ばれる腸内結石のかけらがすべて何者かに奪われ、新聞記者を名乗る怪しい男の影がちらつく。
新種の鯨・“ダイマッコウ”だったのではないか。
確かめるために再び潜ることが叶わず燻る須藤の元に、アメリカの製薬会社大手・バイオメソッド社から研究への出資話が舞い込む。
おいしすぎる話と疑いつつも、再調査のためと割り切りグアムまで飛ぶ須藤だったが……。
その頃、米軍は原子力潜水艦内部で正体不明の攻撃を受け、その調査を行っていた……というストーリーです。

海洋エンタテイメント作品です。
もともとこのジャンルなら何でも来い!の私ですが、冒頭の潜水艦内部での攻撃シーンで引き込まれ、幻の鯨を追いかけるだらしがない学者に何故か愛着が沸いてきて、そこに米軍が絡み、製薬会社も何だか怪しい……と非常に面白く読んだのですが、途中から、強烈な逆風(?)が。
著者の作品は、抜群に設定がうまいと思うんです。
科学的な考察も(素人目には)破綻もないですし、その中で物語的な飛躍もある。
しかし、そこに私からすると“妙なもの”を混ぜてしまうんですよね。
設定であったり、小道具であったり、登場人物であったり、それは様々なのですが、ついつい引っかかってしまうものです。
そのせいでリアリティが落ちてしまって、それだけでなく違和感ばかりが気になって、結果作品として最も盛り上がるであろう場所までにはどこか冷めてしまっている気がします。
断言できる程著者の作品を読んでいないかもしれませんが、今回は特にそうでした。
うまくて面白いだけに、凄く残念。
これが合う人であれば、最高に興奮する作品でしょう。
タイトルにもあるように、巨大鯨“ダイマッコウ”の存在感は抜群ですし、その追いかけっこは緊迫感があります。

標準以上であると感じるだけに、もっと面白くできるのではないかと思ってしまう。
そんな、惜しさがある作品でした。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:は行]藤崎慎吾 | 23:54 | comments(0) | - |
ハイドゥナン 4/藤崎慎吾
〈ISEIC理論〉を実践して琉球を救うには柚と岳志の協力が不可欠と、科学者たちは結論した。
彼らの案内で、新型の大深度深海掘削船〈いざなみ〉の観測・研究施設を訪れた柚と岳志は、琉球の地殻変動の末期的状況を知る。
南西諸島が次々と地震と噴火に飲み込まれ、与那国島にまで沈没の危機が迫る中、科学の成果と神への祈りを統合した大計画が、大地の怒りを鎮めるべく動き出す……生命圏のすべてを描破する全4巻、完結


「ハイドゥナン」全4巻の第4巻。

距離を置いていた柚と再会した岳志。
そこで柚の兄が死亡したことを聞き、岳志も父から聞いた出自を柚に伝える。
苦悩する二人だったが、事態は待ってくれず、黒島と波照間島が沈没。
津波で二人がいる与那国島も壊滅する。
岳志は深海6000mの聖地へ<しんかいFD>で行くことを決意する……というストーリーです。

最終巻です。
最後まで読んでみると、最初に提示された以上の展開はなかったかな、と思います。
予定調和というか。
個人的には無視していたエウロパへの探査機を出している科学者の話も綺麗にまとまり、ハイドゥナンを目指していた200年前の夫婦のエピソードも回収し、他にまとめようがなかったようなラストです。
もうちょっと盛り上がりがあっても良かったかな、とか思いますが、中国の深海調査艇との戦いなんかは面白かったですし、違和感しかなかった神様の存在も許せるようになってきました。
ただ、これだけの長篇にのめりこむ程ではありませんでした。
「もう読み終えちゃった、面白かった!」というよりは「ふう、終わった終わった」という感じ。
プレートに関する理論やマントル内部に住む細菌の存在なと、興味をひかれはしましたが、短くなって良いのでテーマを絞ってくれたらと思わずにいられません。
これは好みの問題かな、と思います。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:は行]藤崎慎吾 | 18:21 | comments(0) | - |
ハイドゥナン 3/藤崎慎吾
南西諸島エリアには政府により急速に観測網が整えられ、リアルタイム三次元音波探査システム〈RETTDASS〉が稼働し始めた。
だが、それらの機器を駆使した科学者たちの警告も空しく、海底噴火によって初の犠牲者が出てしまう。
岳志は弟の療養のため石垣島を訪れていたが、南西諸島の地下異変は日ごとに激しさを増していた。
そして遂にキンバーライトによる大噴火が始まり、柚の身を案じる岳志は再び与那国島へ向かう――。


「ハイドゥナン」全4巻の第3巻。

深海にある聖地へ行くことを神に命じられた柚は、それを拒否したことで祖母を寝たきりにさせられてしまう。
一方岳志は、指導教官の吉田らが属する科学者グループから南西諸島沈没の可能性を聞かされる。
与那国島の柚のことが心配でならない岳志は、記憶障害の弟のために訪れていた石垣島で、久米島が噴火して半分吹き飛んだことを知り……というストーリーです。

とうとう南西諸島沈没が目の前に迫ってきました。
それなのに政府は、海洋資源や領土問題で頭がいっぱいで住民の避難を最優先にしたい科学者たちの声に耳を傾けようとはしません。
一方、柚と岳志の恋愛は哀しい方向へ進んでおります。
……いやあ、科学者たちのお話はとても物珍しくて面白いのですが、なんていうか近未来だということを除いても私のようなタイプの人間には身近にはなってきません。
石の記憶を読み取る装置だとか、もっともらしく説明がしてありますが、ドラえもんの秘密道具と同じレベルにしか感じられなくて。
同じトンデモ(と私には思える)だとしたら、まだ柚や柚の兄や一族を苦しめているアニミズムの神様の方が格段にわかりやすい。
同じように地殻変動云々より、柚と岳志の恋愛模様の方が読んでいて気になっております。
そして中国・台湾との海洋資源争奪戦争も面白い。
深海調査艇のパイロットである武田をメインにした物語で神様だとかISEIC理論だとかが添え物ぐらいだったらなぁ……と思いつつ、最終巻へ。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:は行]藤崎慎吾 | 10:54 | comments(0) | - |
ハイドゥナン 2/藤崎慎吾
岳志が発見した“14番目の御嶽”への祈りを通して、柚は「大地の炎が琉球を焼き尽くす」という神の予言を聞く。
その頃、水深6000mの南西諸島海溝では深海調査艇<しんかいFD>の武田洋平が、巨大な人工構造物を発見していた。
“14番目の御嶽”との類似を検証する科学者たちの目的は、地殻変動を食い止める唯一の鍵、南方が提唱する<ISEIC(圏間基層情報雲)理論>の実践にあった。
だが、海底火山の噴火の瞬間が迫る。


「ハイドゥナン」全4巻の第2巻。

岳志と共に発見した新川鼻の“14番目の御嶽”でムドゥルヌチを拝んだ柚は、神により道開きを宣言されムヌチになる。
そこは昔から自然の造形物か、それとも過去の遺跡か論争がある場所だった。
そして深海6000mにもほとんど同じ造形物が存在することがわかるが……。
一方、アメリカで木星の衛星・エウロパへの探査機を飛ばす事業に関わっているホーマーは悩んでいた……というストーリーです。

話が大きくなってきた2巻です。
柚が散々神様から祀れと言われていた“14番目の御嶽”が岳志と出会ったことで判明するも、より厳しいことを要求されてしまいます。
柚は岳志を巻き込みたくない。
岳志は素直に柚の力になりたい……このあたりの恋愛要素は好き。
色々難しい理論が長々と説明してあって、頭が痛くなりそうだった私としては、このストレートな展開がありがたいです。
SFって他のジャンルより恋愛が合う気がします。
それも純愛が。
あと、岳志の弟で記憶障害を持つ元との関係も良いです。
もしかしたらお話が長くなっている原因かもしれませんが……。

物語自体は緊迫してきました。
1巻でも良いなぁと思った深海調査艇の描写は、2巻でもますますうまいです。
柚に語りかける神様の存在にも慣れてきたところで次巻へ。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:は行]藤崎慎吾 | 19:45 | comments(0) | - |
ハイドゥナン 1/藤崎慎吾
西暦2032年、未曾有の地殻変動により南西諸島に沈没の危機が迫っていた。
領海と海底資源の既得権確保を優先する政府に対し、植物生態学者・南方洋司ら6人の科学者は、地殻変動阻止のため極秘プロジェクトを開始。
彼らと共に与那国島を訪れた共感覚を持つ青年・伊波岳志は、島の巫女的存在である後間柚と出会う。
彼女は大地の怒りを鎮めるため“14番目の御嶽”を探していた……日本SF史上最高の科学小説、待望の文庫化。


「ハイドゥナン」全4巻の第1巻。

大学生の伊波岳志は、三年前から伊豆のある海に潜ると、海中ではっきりとした女性の声を聞くようになっていた。
岳志は「共感覚」という、ある刺激を受けた時に数種類の異なる感覚でそれを捉えてしまう人間だった。
彼にとって音には色がついているものだ。
それの一種なのか、それとも自分は狂い始めているのではないか。
不安に駆られた岳志は、指導教官であり共感覚の研究者である吉田を頼る。
一方、与那国島に住む後間柚は、神に巫女であるムヌチになれと脅されていた。
“14番目の御嶽”を探せという神の声に悩む柚。
そして沖縄を含む南西諸島の地下では、かつてない動きが始まっていた……というストーリーです。

海洋SFだと思って読み始めたので、柚という女性キャラクタがムヌチという巫女で、本当に神様と会話をしている設定だと知って、違和感を憶えました。
南西諸島が沈没するかもしれないというお話を提示してくれているマッドサイエンティストたちのグループの話は凄く面白いのですが、どうもこの手の存在が苦手な身としては拒否感が強いです。
とはいえ、読んでいて?と思ったのはそこだけでなく、量子コンピュータの実用化というところで裏表紙を再確認してみたら舞台が2032年だったりして、驚いたり。
ただ、1巻は状況や人物の説明にほとんどが使われていて、お話がガツンと進むことはありませんでした。
面白かったのは、深海の描写ぐらいで……。
この後に期待したいところです。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:は行]藤崎慎吾 | 02:30 | comments(0) | - |
レフト・アローン/藤崎慎吾
21世紀半ば、各国コロニーが勢力争いを繰り広げる火星で、五感を制御されたサイボーグ兵士のジロウは熾烈な戦闘に従事していた。
だが、彼の世界認識には哀しい秘密が隠されていた――デビュー長篇『クリスタルサイレンス』の前日譚たる表題作、奄美在住の画家と不思議な石との交流が壮大なヴィジョンを紡ぐ、『ハイドゥナン』の姉妹篇的中篇「星窪」など、科学という言葉で語られた生命と宇宙の神話、全5篇を収める傑作集。


短編集で
「レフト・アローン」「猫の天使」「星に願いを ピノキオ二〇七六」「コスモノーティス」「星窪」
の計5編を収録。

表題作の「レフト・アローン」と「星に願いを ピノキオ二〇七六」は「クリスタル・サイレンス」の関連作品で、「星窪」は「ハイドゥナン」の姉妹作品になるそうです。
(「ハイドゥナン」は未読なので、どうつながっているのかは不明)
表題作になっている「レフト・アローン」は苦手な雰囲気だったのですが、他4編は全部好きでした。
選ぶとすると、SFと猫は切り離せないというのは本当なのか、猫の視野をそのまま見ることが出来るようにする実験をテーマにした「猫の天使」か宇宙を舞台に特殊な進化を遂げた“生物”を描いた「コスモノーティス」でしょうか。
(ばりばりのハードSFはやはり苦手意識が強いです)
「クリスタル・サイレンス」より巧くなっているのか、著者の作風が短編に向いているのかは2作しか読んでいない状態では何とも言えませんが、SF好きな方は読んで損はないと言い切れるかと思います。
| [国内作家:は行]藤崎慎吾 | 17:03 | comments(0) | - |
クリスタルサイレンス/藤崎慎吾
西暦2071年、テラフォーミングが進みつつある火星の北極冠で、高等生物と思われる死骸が発掘された。
地球外知的生命の遺物である可能性に、生命考古学者のアスカイ・サヤは火星へ向かう。
だがそこは、開発先進国と後発国の緊張が高まり、謎の疫病が蔓延する危険な世界だった。
採氷基地での調査を開始したサヤら学術調査団にも、何者かの攻撃が加えられる……超大作『ハイドゥナン』の著者による記念すべきデビュー長篇。


2071年、地球化が進む火星の氷の中から謎の高等生物の死骸が、それも「喰われて」発見される。
地球外生命体の存在も疑われるなか、生命考古学者の卵であるサヤが派遣されることとなり、サヤは恋人に別れを告げて火星に向かう。
しかしそこは各国の利権が絡んだ争いに満ちた世界でだった……というストーリー。

SF的な見所はサイバースペースでの戦いでしょう。
凝った作りですし、上下巻でそれほど短くない物語だというのに、最後までテンションが下がらずに読みきりました。
しかし、なんとなく設定と見所が噛みあってないような、妙な違和感を憶えました。
主人公が主人公らしく生命考古学者として、期待する程あまり活躍しないためでもあります。
(というか他キャラクタの設定が濃くて、印象が強い)
そのせいか、それとも私がSFを読み慣れていないせいか、主人公の恋愛がどう帰結するのかだけが気になって気になって、ハラハラしました。
その点では非常に満足いたしました。
これだけストレートに恋愛色の強いSF作品も珍しいかと思います。

上下巻完結。
クリスタルサイレンス〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)
クリスタルサイレンス〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)
藤崎 慎吾
| [国内作家:は行]藤崎慎吾 | 22:11 | comments(0) | - |
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