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おばらばん/堀江敏幸
評価:
堀江 敏幸
新潮社
¥ 460
(2009-02)

とりすました石畳の都会から隔たった郊外の街に暮らす私。
自らもマイノリティとして日を過ごす傍らで、想いは、時代に忘れられた文学への愛惜の情とゆるやかにむすびつきながら、自由にめぐる。
ネイティブのフランス人が冷笑する中国移民の紋切型の言い回しを通じ、愛すべき卓球名人の肖像を描いた表題作をはじめ、15篇を収録した新しいエッセイ/純文学のかたち。
三島賞受賞作。


エッセイ集で
「おぱらばん」「BLEU,BLUES,BLEUET」「ドクトゥール・ウルサン」「留守番電話の詩人」「洋梨を盗んだ少女」「貯水池のステンドグラス」「床屋嫌いのパンセ」「ボトルシップを燃やす」「音の環」「黄色い部屋の謎」「クウェートの夕暮れ」「手数料なしで貸します」「M」「珈琲と馬鈴薯」「のぼりとのスナフキン」
の計15編を収録。

第12回三島由紀夫賞受賞作。

エッセイなのか純文学なのか、読む人によって分かれてしまうどころか判断できない読者もいそうな内容です。
私はエッセイとして読みましたが、その完成度の高さには満足しかありません。
何より文章が、音が美しい。
クスッと笑え箇所もあり、幻想的なラストに流れるように繋がることもあり、微かな残酷さにどきりとさせられることも。
癖がないとは言えないので好みの問題もあるでしょうが、私は一編一編大切にして読みました。

好きなのは表題作「おぱらばん」と、市場で馬鈴薯の花を譲ってもらったことから、馬鈴薯売りの男から格別に旨い珈琲豆を買うに至る「珈琲と馬鈴薯」でしょうか。
後者は特に印象に残っています。


JUGEMテーマ:読書
| [国内作家:は行]堀江敏幸 | 19:27 | comments(0) | - |
雪沼とその周辺/堀江敏幸
小さなレコード店や製函工場で、時代の波にとり残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。
廃業の日、無人のボウリング場にひょっこり現れたカップルに、最後のゲームをプレゼントしようと思い立つ店主を描く佳品「スタンス・ドット」をはじめ、山あいの寂れた町の日々の移ろいの中に、それぞれの人生の甘苦を映し出す川端賞・谷崎賞受賞の傑作連作小説。


連作短編小説で
「スタンス・ドット」「イラクサの庭」「河岸段丘」「送り火」「レンガを積む」「ピラニア」「緩斜面」
の計7編を収録。

心地良い小説群でした。
タイトルからもわかるように、雪沼という小さなスキー場があるだけの山間の土地近辺に住むごく普通の人々の生活を切り取ったものです。

少しずつですがストーリーを紹介しますと、「スタンス・ドット」は経営するボウリング場の最後の日にトイレを借りにやってきたカップルに最後の1ゲームをしてくれないかと主人が頼むもの。
「イラクサの庭」は雪沼に越してきてレストラン兼料理教室を営んでいた先生の教え子が、師の最後の言葉を思うお話。
長年使っている旧式の機械の調子が悪いのではないかと悩む「河岸段丘」に、書道教室として貸していた相手と結婚し、子供を亡くした夫婦の「送り火」
「レンガを積む」はレコード店を居抜きで買った小男の話で、「ピラニア」は不器用な中華料理店店主の、また「緩斜面」は幼なじみの口利きで消火器販売の営業をしている男の話です。

どれもしみじみと良かったのですが、私はやはり「送り火」に感情移入しました。
子供を事故で亡くすということが、親にとってどれだけ辛いことか、人生が人間が変わって普通の出来事を胸に秘めている夫婦の姿が不器用で美しい。
どの作品も特に何か劇的な事件があるわけではないのですが、登場人物たちの関係が穏やかで優しくて、綺麗な作品集でした。
| [国内作家:は行]堀江敏幸 | 21:32 | comments(0) | - |
いつか王子駅で/堀江敏幸
評価:
堀江 敏幸
新潮社
¥ 380
(2006-08)
背中に昇り龍を背負う印鑑職人の正吉さんと、偶然に知り合った時間給講師の私。
大切な人に印鑑を届けるといったきり姿を消した正吉さんと、私が最後に言葉を交わした居酒屋には、土産のカステラの箱が置き忘れたままになっていた…。
古書、童話、そして昭和の名馬たち。
時のはざまに埋もれた愛すべき光景を回想しながら、路面電車の走る下町の生活を情感込めて描く長編小説。


印鑑職人の正吉さんと居酒屋で酒を酌み交わすのが楽しみな“私”は、講師という気楽な身分と生活を楽しんでいる。
ある日大切な相手に印鑑を届けると言って店を出て行った正吉さんは、手土産であろうカステラを忘れていた。
それを預かり、正吉さんが帰ってくるのを待つ“私”だが……というストーリー。

一体どこからどこまでが「一文」なのだ、というぐらいに長い文章でつれづれと語られる“私”の生活には、悪意がなく、また主人公のちょっとした子供っぽさが微笑ましい作品でした。
私は「王子」という場所が下町なのかどうなのかもわかりませんが、いかにもそれらしい姿で描かれていて、懐かしく感じる方もいらっしゃるかもしれません。
合間合間に主人公が思い出す、昭和の名馬たちにも思い入れが深い人も多いでしょう。
私は、家庭教師となるアパートの大家さん宅のお嬢さんである“咲ちゃん”とのエピソードが好きです。
また、中古の自転車を手に入れ遠出した“私”が、帰ってきて自転車屋さんに呆れられるシーンも。
全体的に穏やかで、気持ちの良い作品でした。
| [国内作家:は行]堀江敏幸 | 16:39 | comments(0) | - |
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