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ブラックスローン インディゴの夜/加藤実秋
個性的なホストたちが人気を集める渋谷のホストクラブ「club indigo」。
常連客の真千子が殺され、指名されていたホスト・DJ本気が疑われる。
オーナーの晶とホストたちが事件を追ううち、ネット上に「もう一つのindigo」が存在し、真千子がそこを運営していたことが分かる。
ネットとリアルの両方から犯人探しを進める晶たちだが……。
大人気シリーズ最新作が文庫オリジナルで登場!


「インディゴの夜」シリーズ第5弾。

ホストクラブブームで様々なタイプの男の子と遊べる場所が増えるなか、club indigoの売上は上々。
そんな中、クラブの常連・真千子が殺され、DJ本気が疑われる。
アリバイがあるものの、いつものように事件に首を突っ込むindigoの面々は、真千子の手帳からネットの仮想空間に原因があると踏むが、「きゃぴタウン」の経営者は一癖も二癖もありそうな男で……というストーリーです。

第4弾「Dカラーバケーション」が行方不明なので、感想も一つ飛ばして、長らく積読していた第5弾です。
(私事ですが、床にタワー状態の文庫が積まれていて、何がどこにあるのか、そもそも読んだのか読んでないのかもわからない状態です。第6弾も行方不明なんですけど、収納場所が少ない方々はどうやって管理しているんでしょうね。そもそものズボラが形になっているだけという説も大きいですが)
さて、内容はというと、シリーズ初の長編です。
毎回、悪く言えば風化しそうな現代的要素を突っ込んでくる著者ですが、今回は仮想空間でのトラブルが事件の背景となっています。
ネットでのトラブルがリアルに影響しちゃうのは、むしろ現実でもどんどん進んでいることかもしれませんね。
あれこれ説明するためにオーナー二人を物知らずにする作法はあまり好きではないですが、おばさん臭いのが語り手・晶のキャラクタと考えれば、長編になろうといつものノリ、ということでしょうか。
軽く楽しく読める作品でした。

ただ、いつの間にか創元推理文庫から集英社文庫にお引越ししていて、違和感アリアリ。
創元推理の装丁の方が好みだったし、イラストもだし、そもそも集英社文庫の紙とか手触りとか大嫌いなんですよね。
大人の事情というやつでしょうが、残念でした。


JUGEMテーマ:読書

| [国内作家:か行]加藤実秋 | 13:26 | comments(0) | - |
特捜部Q ―カルテ番号64―/ユッシ・エーズラ・オールスン、吉田薫訳
未解決だった難事件を次々と解決、やっと日の目を見つつある特捜部Q。
だが捜査を待つ事件は増えるばかりだ。
そんななか、特捜部の紅一点ローセが掘り起こしてきたのは、20年以上前にエスコート・クラブの経営者リタが忽然と姿を消した奇妙な事件。
しかもリタとほぼ同時に失踪した者が、他にも5人いることが判明し……。
デンマークの代表的文学賞「金の月桂樹」賞を受賞、ますます波に乗る大人気警察小説シリーズ第4弾!


特捜部Qシリーズ第4弾。

いつも押し付けられる事件に腰が重いカールだったが、アシスタントのローセが引っ張り出してきた女性失踪事件に興味を持ってしまった。
ところが、かつての同僚バクの妹が襲われた事件を捜査するよう言われたり、カールに圧力をかけるためにそのバクがカールの叔父が死んだ事件を掘り起こしてきたり、同僚アンカーが死に、ハーディが不随となった事件に新たな展開も。
そして失踪事件は、同じ日に5人の失踪者が出ていたことから、スプロー島にあった女子収容所で行われていた人権侵害へと繋がっていく……というストーリーです。

過去と現在が交互に描かれる形式はこのシリーズの特徴というか、過去の事件を再調査する部署が舞台なので当然なのですが、シリーズ中でこれほど取り返しのつかない過去のパートを憐れに思ったことはなかったかもしれません。
最後に著者から、作中登場するスプロー島女子収容所で優生学に基づき行われていた同意のない不妊手術等の行為が実際にデンマークで行われていたこと、そしてそれをデンマーク王国が正式に謝罪していないことが淡々と説明されていますが、登場人物の悲惨な過去を読み終えた後だけに、たった一ページのその文章にこめられたものを考えてしまいます。

物語としては変わらず面白かったです。
失踪者に関してはっきりと伏線が書かれていたのに完全に油断してお話に集中していたので、最後驚いていましましたし。
こういう読者への裏切りは大歓迎。
シリーズ途中の巻としては、カールの過去の事件に進展があったのも、新たに叔父の死の謎が加わったのも興味を引かれますし、アサドがますます怪しいのがたまりません。
アサドの人物設定って本当に卑怯な程素晴らしい。

ところで、ストーリーには関係ないのですが、シリーズものでこれほど翻訳者が一定ではないのって珍しくないことなのでしょうか。
海外小説って翻訳した方の語彙やセンスでかなり印象が変わるものなので、結構気になる。


JUGEMテーマ:読書

| [海外作家:K〜O]ユッシ・エーズラ・オールセン | 11:17 | comments(0) | - |
特捜部Q ―Pからのメッセージ―/ユッシ・エーズラ・オールスン、吉田薫・福原美穂子訳
その手紙は、ビンに収められたまま何年間も海中にあり、引き揚げられてからもすっかり忘れ去られていた。
だがスコットランド警察からはるばる特捜部Qへとその手紙が届いた時、捜査の歯車が動き出す。
手紙の冒頭には悲痛な叫びが記されていたのだ。
「助けて」
いまひとつ乗り気でないカールをよそに、二人の助手アサドとローセは判読不明のメッセージに取り組む。
やがておぼろげながら、恐るべき犯罪の存在が明らかに……


特捜部Qシリーズ第3弾。

スコットランド警察から、七年も前に発見された海中の瓶の中に入っていた手紙が送られてくる。
デンマーク語だったためだが、時間が立ちすぎていたため読み取れる言葉は少ない。
だが、最初の言葉だけははっきりとわかった。
「助けて」と書いてあるこの手紙の謎を追いかけることに気乗りしないカールは、古巣の殺人捜査課に意趣返しできそうな連続放火事件に関わりたいのだが、助手のアサドとローサはカールの意に反して事件を追いかけはじめる……というストーリーです。

連続誘拐事件を描いているのですが、宗教的マイノリティのコミュニティについて疑問をおぼえると展開に違和感がでるかもしれません。
自分の信仰と子供を天秤にかけるようなことが、そもそも信仰のない私には理解できません。
コミュニティから排除されることへの恐怖も薄いので、余計に。
だからこそ、犯人の人生や背景がこれでもかと描かれているのかもしれませんが……。

展開事態は前作、前々作に続き、古い事件を調べつつも現在進行形の被害者を主人公たちが救えるのか、ギリギリの状況が続くスリルにどきどきしながら読めます。
文句なしで面白かったです。
ただ私は、子供たちよりも夫のことを疑い、窮地に陥った女性が救われるのかどうかが気になって気になって。
著者の描く女性は皆それぞれ芯が通った強い人物が多いですが、私程度の読者でもありえるこの女性のごくごく平凡な悩みがとんでもない闇をはらんでいるあたりが、私に感情移入させたのかもしれません。

そして、変わり者揃いの特捜部Qに前作加入したローセのとんでもない事態と、ますます謎が深まるアサドの私生活が本筋の謎よりよほど気になります。
特にアサドは一体どこに住んでるんだ……シリアからの亡命者というのも怪しくなってきたし、シーア派っていうのが関係あるんでしょうかね。


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| [海外作家:K〜O]ユッシ・エーズラ・オールセン | 12:00 | comments(0) | - |
特捜部Q ―キジ殺し―/ユッシ・エーズラ・オールセン、吉田薫・福原美穂子訳
いったいこの書類はどこから送られてきたんだ?
いつのまにか特捜部Qのデスクに置かれていた20年も前の事件の書類。
18歳と17歳の兄妹が惨殺された事件だが、その後犯人は自首して服役中。
つまり未解決ではない。
なのになぜ未解決事件を調査する特捜部Qに?
興味を抱いたカールとアサド、それに新メンバーのローセは再調査に取り組むが、当時の容疑者たちはいまや有力者に……ますますパワーアップの人気シリーズ第2弾。


特捜部Qシリーズ第2弾。

殺人捜査課の厄介者カールと、シリアからの亡命者アサドの二人だけだった特捜部Qに、ローセという女性が加わった。
この女性、優秀な成績で警察学校を卒業したものの運転免許が取得できず、秘書になったものの何かをやらかして特捜部Q送りになったらしい。
新たな問題児の登場に頭を悩ますカールのところに、あらたな過去の事件ファイルが舞い込む。
しかし、その兄妹が撲殺された事件は犯人が自首して解決済みのものだった。
誰がこのファイルを持ってきたのか?
事件を探ると、誰もが確信する犯人グループが存在していたこと、自首した犯人はそのグループの一員に過ぎなかったこと、彼らの周囲で死と暴力が蔓延していたことが次々とあきらかになる。
グループのほとんどは財界の有力者になっていたが、ただ一人の女性メンバーであるキミーの行方がわからない。
そして、このキミーは事を起こす時期を窺っていた……というストーリーです。

第1弾ほどの衝撃はなかったのですが、面白かったです。
分厚い本を一気に読める、読みたいと思えることが幸せでした。
ただ、内容は重かったです。
暴力に魅入られた少年たちが、うまくその罪から逃れて傲慢な人生を送っているあたり、本当に胸糞悪いの一言。
犯行の様子が様々な視点で描かれていますが、痛みと血の匂いが漂ってきそうで、しかも、もしかしたら善人ですという顔をして生きているこういう奴が自分の周囲にもいるのではないか、と思わせる絶妙な人間らしさもあって気持ち悪かったです。
彼らが現在主催している「キジ殺し」なるハンティングも最悪。
そこに主人公たちが切り込んでいくわけですが、それとは別にこの一作に限っては主役は彼女ではないかと思わせるキミーの存在感が大きいです。
決して感情移入できるような平凡な女性ではないのに、途中から完全に彼女のことを応援してしまいました。
新登場人物ローセもですが、著者の描く女性はエキセントリックな人物ばかりなのに不愉快じゃないんですよね。

そして、カールの同僚アンカーが死に、ハーディーが寝たきりになった原因となった事件に不穏な動きが。
この事件を少しずつ追いかけるのが、シリーズを貫く謎解きになるんでしょうね。


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| [海外作家:K〜O]ユッシ・エーズラ・オールセン | 10:47 | comments(0) | - |
無菌病棟より愛をこめて/加納朋子
愛してくれる人たちがいるから、死なないように頑張ろう。
―急性白血病の告知を受け、仕事の予定も、妻・母としての役割も、すべてを放り出しての突然の入院、抗癌剤治療の開始。
辛い闘病生活の中で家族と友人の絆に支えられ、ユーモアを忘れずに人気ミステリ作家が綴る、たくさんの愛と勇気、温かな涙と笑いに満ちた闘病記。



最初はただの風邪、貧血と診断されて、自覚症状のないまま肺炎になっていて、血液検査の結果がおかしいと言われ、その根本は急性白血病だった、ということころから始まるミステリ作家として知られた加納朋子さんのノンフィクションです。

私は作家さん本人にあまり興味がなくて、むしろ作品も作家まるごと全部読むこともほとんどない適当な読者なのですが、加納さんの作品は出版されれば必ず買っています。
それだけに一報を聞いた際には驚きましたし、ハードカバーで出版された時に珍しく手に取りました。
本屋さんで最初の方を立ち読みして(ごめんなさい)、いつもの柔らかい文章にほっとさせられて、帰宅してしかしじっくり読み進めて胸が苦しくなりました。
つとめて明るく描かれてはいるものの、だからこそきつい治療や当たり前にある今後への不安がストレートに飛び込んできて、途中で休憩を何度入れたことか。
病というのは特に理由もなく、突然に降ってかかるものだと思えば思う程、自分はこんなに「きちんと」過ごせるかなと考えました。
自分のことだけでなく、家族がこうなったら、とか。
テンポ良く読ませてくれる作品なので、身近な方も、そうでない方も機会があれば一読されると良いのではないかと思います。


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| [国内作家:か行]加納朋子 | 23:48 | comments(0) | - |
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